Librobreto UVerdaj tagoj

□月下航海
1ページ/5ページ


九回目の寝返りを打った時、寝台から抜け出た方が賢明だとアイオリアは悟った。


真昼の狂熱の痕跡が、夜風の波に完全には攫われずに大気に漂い、躯に忍び込もうとにじり寄る。

それに知らぬ振りを決め込もうとしたアイオリアだったが、相手の方が一枚上手で、何かしらの方法で斥ける他無い様であった。


アイオリアは一つ溜息をつくと、横になっていた寝台から身を起こし向かい側の窓を見遣った。


そこからは仄白い光が靄の様に浮遊している。


無意識の内にアイオリアは窓辺へと歩んでいた。


屋内から窺う空は雲一つ無く、星々のひそやかな光と、満ち満ちた美しさを惜し気もなく零す月の光とが、殺風景な闇に僅かながらの息吹を与える。


その感覚に何処と無く心地良さを覚えたアイオリアは、着替えを済ませると、己れの熱に呼応する陽光の残り香の狭間を擦り抜けるかの様に、夜へと紛れ込んで行った。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ