Librobreto UVerdaj tagoj

□復活
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子供は、幾度も幾度も、同じ行程を辿っては、また元の場所へと戻って来てしまい、べそをかくのをこらえながらも途方に暮れていた。

いつ夜明けが来るのかわからぬ薄明に浸された風景は、硝子瓶から覗いた向こう側の様に、何処かぼんやりとしていた。

周囲には大きな木が立ち並び、それらはみずみずしい葉を豊かに繁らせている様に見えるのだが、何かが

―そう、何かが欠落してしまっているのだ

風がそよとも吹かぬ中、木々はただ、そこに『見える』だけなのだ

―『在る』と言うにはあまりに無気味な程に押し黙っていた。

鳥の羽ばたき一つ聞こえない

―『音』が忘れ去られたこの世界で―

子供は歩き疲れたのと、自分一人という心許なさにすっかり参ってしまい、もう、ただその場にへたりこむ事しか出来なくなっていた。




―無音の、空気の動きの無かったこの世界に、俄かに波紋が広がった。

澱んだ井戸の水目掛け、誰かが気まぐれに小石を投げ込んだかの如くに。

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