Trezoroj<Noveloj>

□理由なんていらない(瞬&貴鬼)
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僕の兄さんは弟の僕をとても可愛がってくれている。



不器用で無愛想で無口な人だから誤解を受けやすいけど、本当は正義漢に溢れ優しい人だと僕は知っている。




兄さんのことは大好きだけど……時々判らなくなるときがある。




僕は頼りなくて泣いてばかりでいつも兄さんに頼りっ放しだった。


そんな僕に“強くなれ”厳しく当たるときもあったけど、いつも最終的には助けてくれた。





どうしてこんな弱い弟を兄さんは見捨てずに時には身代わりになるようなことをしてまで守ってくれるんだろう?




同じ両親の血を分けた肉親だからと言う理由だけで……そんなにも無条件で大切にされることがすごいことだと思う。



そしてまた、“弟”という立場しか経験したことのない僕には未知数なこともあった。




異母兄弟の紫龍や氷河や星矢たちもいたけど……年も存在も近過ぎて兄弟と言うよりは仲間とか同胞とか……どっちかって言うと、友人と言う感覚に近かった。






だから、“兄”という者の立場がよく判らなかった──。











「瞬……」


「どうしたんだい? こんな時間に」




真夜中も1時過ぎに、僕の部屋に枕を抱えた貴鬼が訪室してきた。



「……何だか眠れないんだ……あのね、だからね?」



切り出し難そうに貴鬼が抱えた枕に顔を埋めながらもそもそ話す。



夕方の出来事を思い出す。




公園に迎えに行った貴鬼は不安だったのか泣き出した。そして僕の背中におぶさり眠りながら帰宅した。


変な時間に寝てしまって目が冴えて眠れないのだろう。





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僕は思わずほくそ笑むと掛け物を少し上げて身体をずらしスペースを作り貴鬼に話し掛けた。





「眠れないの? 一緒に寝る?」



「……うん!」




貴鬼は安堵から目を煌めかせながら僕の寝床に潜り込んできた。

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