Trezoroj<Noveloj>

□おうちに帰ろう(瞬&貴鬼)
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オイラには親はいない。



正確にはこの世界のどこかに生きているかもしれないし……もういないかもしれない。



だから、オイラは両親の顔も知らない。オイラがどちら似なのかも判らない。




でも、寂しいなんて思ったことはない。





だって、ムウ様がオイラの親代わりになってオイラのことを時には甘やかせて時には厳しく躾て、有りっ丈の愛情を注いで育ててくれたから。



ムウ様はオイラにとってはもう親以上に近しい存在で大切な家族になった。






それでも……やっぱり“親”とは別格の存在がいればなって思ったこともある。





人里離れたジャミールでは同じ年頃の子供と知り合うことは皆無に等しくったし修業中の身だしまともに遊んだことすらなくて……オイラに“友達”なんてモノはできなかった。



ムウ様も厳しいばかりではなくて息抜きにたまに遊び相手になってはくれたけど、やっぱりムウ様は親代わりで師匠で……“友達”ではなかった。







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そして、たまに街中で見掛ける子供たちは一人じゃなかった。


それは友達と言うより、“きょうだい”という繋がりを持った子供たちだった。






“親”や“友達”とは違うもっと近しくて親しい人。





勿論、実父も実母も不明なオイラにはきょうだいの存在もまた不明だった。





きょうだい……それってどんな感覚だろう?




上のきょうだいなら、お兄ちゃんかお姉ちゃん?



お兄ちゃんなら、一緒にキャッチボールしたり秘密基地で遊んだり?

お姉ちゃんなら、優しい笑顔で甘いお菓子とか作ってくれたり?



下のきょうだいなら、弟か妹?


弟なら、生意気だって喧嘩したり駆けっこしたり?

妹なら、花畑で花冠を作って飾ってあげたり苛めっこから守ってあげたり?






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オイラには空想するしかできなかった。しかもなんだか凝り固まったイメージしか思い浮かばなかった。






判らない。




オイラには経験したことないし、望んだからってできるモノでもないから、判らないんだ。




だから尚更、仲良さそうに手を繋いで家路に帰るきょうだいの姿が羨ましくて仕方なかった。






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