Librobreto V

□神話的情景V
1ページ/2ページ


歩む 歩む

小暗き空の下
道無き道を


その小さな手には
蜜色の光を放つ羽が
いちまい


懐かしい輝きの断片


最期の鼓動が
耳元で
打ち鳴らされた刹那

渡された
いちまいの羽




ほら この先にも―

羽が いちまい―




歩む 歩む

荊の淒(つめた)さを
隠し持つ風の中

向かう先を
見失いそうな広がりを


その小さな手には
懐かしい温かさを伝える
羽がにまい


離れる瞬間
左の頬を掠めた

確かな温もりの記憶

それを心に留める
にまいの羽




ああ あの先にも―

羽が いちまい―





そうして
舞い散った羽を
拾い上げ
歩き続けていた少女は


気が付けば

懐かしい人々のところに
辿り着いていたのでした





―道標を
残してくれた
あなたは何処に?―




一番逢いたかった
懐かしいその人に

やはり
もう逢う事が
出来無いと分かり

少女は

両手いっぱいの
羽の上に

小さな吐息を
落としたのでした


-Fino-
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ