Librobreto V
□彼の者、その手に星を掴むべき
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無表情な岩々が転がる褪せた黄土に子供が一人、倒れ伏している。
その子は微動だにせず、一見した所死んだようにも見える。
子供から少し距離を置いて立っている少年―その表情は険しく、何かに対し怒りを胸に抱えているかのようだ。
彼は、子供に声を掛けるでも無く、只、その瞳に子の姿を映している。
―何故、この子でなければならぬのだろう―
幾度も己れの中で繰り返されたこの問いを、今また心の中で問う彼は、二月(ふたつき)程前の事を思い返していた。
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