Librobreto V
□風の腕(かいな)
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今日は自棄に風が強い―
天を仰げば、大いなる者の息吹に吹き清められたような空が、その至高の瑠璃の翼を惜しみ無く広げ、彼の瞳に優しい雫を呼び起こす。
その奇妙な感触をどこと無く愛おしく思い、しばしの間空を見つめ続けていると、鳥の一群が飛んで行くのが目に入った。
きっとこの風が追い風になっているのだろう、流れる様に視界を横切って行く。
今だ空を見上げたまま、風が己の髪を乱暴にあしらうのを煩わしいと思う事無く―寧ろ、何かを懐かしむかの如く、この戯れに任せて思いを馳せるは―
あの日のこの道―
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