Librobreto V
□繋げるもの 繋がるもの
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「…では、良いですね、貴鬼。私が戻って来るまでは、決して館の外へ出てはなりません。
十日過ぎても私が帰って来ない時は、私は死んだものと思って、五老峰の老師の元へ行きなさい。」
幼い弟子にそう言い残すと、ムウは外へと姿を消した。
一人残された貴鬼は、先程まで自分の傍らにいた師匠の小宇宙の残滓(ざんし)が時間の経過と共に室内に薄まっていき、やがて完全に揮発して何も感知出来なくなってゆく中、どうする事もなく椅子に腰掛けていた。
―ひとりぼっち。
そんな言葉をぽつり、心の中呟く。
今までは、ムウが外界へ行く際には貴鬼も連れ立っての事であったし、その日数も三、四日が関の山であった。しかし今回の外出はどうしても日数が掛かる上、生命にかかわる格段に高い危険度の為、この弟子を館に一人残す事に決めたのだった。
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五、六歳といえば、所謂普通の一般社会に於いては未成年もいいところ、三日も保護者無く放置されれば間違い無く児童虐待で通報される状況なのだが、聖戦に赴く世界では、年齢と言う側面で判断される事は極めて稀だ。
―要は戦いの場で役立つかどうかであり、能力が無ければ容赦無く切り捨てられる―
それがこの世界の常識、と考えられている。しかし、―…この子供の師であるムウと言う少年(と言ってもいい年齢なのだ、彼も)は、この世界に身を置く者らしからぬ思考を何処でやら身につけたらしかった。
というのも、今回の事にしても―まあ、足手まといになるから連れ出さない、と言うのはあるにせよ、館の周囲に強固な結界を張り巡らせ、更には万が一おのれの身に最悪の事態が起こった場合の、弟子に指示した対処の内容から鑑みても、冷徹な戦士たれ、と言う姿勢からは些か離れている。
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