Librobreto V
□愛しき女神の為その翼を折りしもの、汝の名は…
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明るい栗色の長い髪を、海風にそよぐにまかせたまま、少女は防波堤の上を歩き続ける。
まるで、風の神と戯れ、踊っているかの様で、その足取りは優美だけれども朧たげだ。
「…何処まで歩き続けるつもりなの?」
防波堤沿いの歩道を少女と並行しつつ歩く少年が、少女へ視線を投げ掛けながら問う。
「… わからないわ。」
半ば夢の中にいるかの様な表情で、風の愛撫の心地良さに目蓋を下ろしたまま答える。
少年は−
−少年と言うには余りに可憐な顔立ちをしている−
−大きな瞳をそっと伏せる。
彼の戸惑いを感じ取ったのであろう、少女は目をあけ、少年を見つめる−
−尚も歩を進めながら。
そうして、ふわりと目許に笑みを漂わせると
−それは微かにはかなさを孕んでいたが−
「…瞬?」
と、声を掛ける。
呼ばれた少年は、その声の主へと再びその瞳を向ける。
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