Librobreto T Nomoj de Floroj
□Varmo
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きっとあの子は部屋の片隅で小さくなっているわ。
とても淋しがり屋だから、困らせていないといいけれど。
早く迎えに行ってあげなくては。
今日、少し早くに仕事を終えた私は、古ぼけた急な階段を足早に上る。
ぎしり、と音を鳴らす度にあの子の笑顔に近づいているのだと思うと、どんなに疲れていても、まるで翼を手に入れたかの様に身体が軽やかになるのだった。
あっという間に目的の階に着くと、仄暗い廊下を歩き、一番奥の部屋の扉の前に立つ。取っ手に手をかけようとした、その時。
がちゃり、と音がしたかと思った瞬間、扉が勢いよく開かれる。
そこからまろび出て、私の脚にぶつかる様にしがみついて来た子。
私の足音を聞き付けて、居ても立ってもいられなくなったらしい。
放たれた扉から流れでてきた、柔らかで温かな空気が、私の冷え切った身体を撫でる。
向かいの窓からの日の光が、あんまり急に瞳に飛び込んで来たものだから、私は思わず目を閉じてしまった。
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「…ごめんなさい。いたかった?」
とても心配げな、幼い声。
私は何度か瞬きをしながら、この子に顔を向けて言った。
「大丈夫、どこも痛くないわ。お日様にびっくりしてしまったの。」
そうして私は屈み込み、そのつやつやとした頬を、両手いっぱいで摩る事で、彼を安心させた。
心からの明るい笑顔を取り戻した子は、私の首にぶら下がる様に抱き着くと、今まで過ぎた、私の傍らにいない時間の埋め合わせをするのだ、とでも言う風に、私の顔にキスの雨を降らせ、頬擦りをした。
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