Librobreto T Nomoj de Floroj
□Beno
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――先の闘いの名残―
―凍気が漂う此処には、もはやあの懐かしい友の姿は無く――
宮に足を踏み入れた刹那、厳然とした現実がその頬を嬲った感覚に囚われ、青年は、ひと呼吸失った。
宮内は青黒い闇に染まっているが、時折煌めく氷の欠片が儚い光で彩る。
輝きが浮かんでは消える度、次第に幽かになりゆくは―友の『生』の痕跡。
青年は立ち止まり、辺りを見回した。
その翳り無き海色の瞳に映るものは、無機質な石柱の、定かならぬ輪郭ばかり。
己れ以外の人の気配は誰ひとりとして無い中、彼はこの度の戦いの苦さを噛み締めていた。
―このような別れをする為に、我等は此処に集ったと言うのか―
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余りにも多くのものを失った。
或る者は師を、或る者は弟子を、或る者は兄弟を。
―そして皆が、『同志』と言う枠を超えた、得難い友たちを。
聖戦にその身を投じれば、同胞が斃(たおれ)るのを目の当たりにし、愛しい者達が傍らから永遠に引き離される事を、彼は覚悟していたし、己れの命が闘いに朽ち果てるとしても、それは地上を守る女神の聖闘士としての本懐であると受け入れていた。
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