Librobreto T Nomoj de Floroj

□Decido
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村の子供達が丘の上で何やら作戦会議をしている様子を、彼は半ば興味津々、半ば見守るように、丘の向かい側の傾斜地に腰を下ろして見つめていた。

 子供達は白く大きな一枚布をその身に衣の様に纏い、群生しているコスモスがたおやかに風に揺れながら、そんな彼らを、そっと包み込んでいる。

 どうやら、近く行われる村祭りの出し物の劇を、向こうに見える即興野外舞台にて通し稽古をしているらしかった。

 あちらからこちらへと吹き渡る風に運ばれ、子らの発する台詞の切れ端が彼の耳元を掠める。

それら断片を頭の中で繋ぎ合わせ、演目が何であるか当ててみようと、彼は目を閉じ、あれこれと推測してみた。


『……、−−。』

『−−、−?』

『…−、…!』

『………。』



 長台詞の応酬の為だろうか、自分の場面で言葉に詰まってしまった者があったようだ。

少し長い間(ま)があったかと思うと、哄笑の欠片が彼の耳に飛び込んできた。

それはとても朗らかで翳りの無い魂の響きそのものであり、彼の口許からは自然と優しい笑みが零れるのだった。


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