Donacoj
□An Ordinary Day
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太陽はその存在感を曖昧にしつつ、今日という一日を星々に引き渡そうとしている。
それを惜しむ様に長く伸びる影法師が二つ。
その影を引き連れた一人は小柄な少年で、今一人は大柄な青年であった。
二人の両の腕には、紙袋が抱えられており、それらには果物が一杯に詰め込まれていた。
「なあ、アルデバラン。」
少年が、自分の左隣りを歩く青年に顔を向ける。
「何だ?星矢。」
名前を呼ばれた青年も、問い掛けて来た少年の方を向く。
「俺、今日、ちょっとびっくりしたよ。」
「ん?どういう事だ?」
「うん…。」
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よいしょ、と袋を抱え直すと少年は、その中から林檎を一つ取り出し、はい、と言う風に青年に差し出した。
青年は、差し出されたそれをありがとう、と右手で受け取ると、黄金(きん)が漂う様を大事そうに見つめた。
一方の少年の方は、というと、再び袋の中に手を突っ込み、もうひとつ、自分の為のものを探り当てて取り出し、上着に何往復か擦りあてたのち、それに噛り付いた。
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