Donacoj

□冥府の騎士道
1ページ/6ページ


縫い目の無い闇の静寂にあって、その音(ね)は蛍の様に彷徨っている


ああ 今もまた―



渡り廊下を一人歩いていたラダマンティスは立ち止まり、その鋭い視線を、焔(ほむら)を紡ぎ出す者がいる方向―自分の進む先―へと定めた。



―何時から
この様な感情が
己の内に生まれたのか

己の事でありながら
皆目解せぬこの体たらく―



(冥府の戦士の頂点に立つ、三巨頭の一角であろう者が…)


自嘲の笑いで口元を一瞬歪め、直ぐさま表情を正すと、ラダマンティスは再び廊下を歩き始めた。  


.







「―おや、ラダマンティス。こちらで会うのは久しぶりの様な気がしますが。」

長い廊下を歩き終え、控えの間に入った瞬間、彼は、主神代行者への拝謁を済ませたらしい三巨頭のもう一人が退出するところに鉢合わせした。

「…外地任務が続き、こちらに伺う機会が延びた為だろう。」

「―本当にそれだけですかね?」

「―…何?」

「ここ最近は、謁見も早々に切り上げるか、代理にバレンタインを立てていますし、外地任務にしても片っ端からあなたが引き受けてしまうではないですか。今回もアイアコスが出動するところをあなたが半ば強引に交代を決め込みましたよね。」

「…何が言いたい?」


相手の回りくどい物言いに僅かに不快感を滲ませ、ラダマンティスは問うた。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ