++ 展示T ++

□月夜の逢瀬
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「行ってきます」

「気をつけてね」

「はい」


その日は、夜空に浮かぶ満月がほのかな光を放ち、街を見下ろしていた。

普段は暗闇を飾る星の煌めきは成りを潜め、今はその座を月に譲っているようだ。


母に別れを告げ、静かに外へと足を踏み出した柳生は、ゆっくりと夜道を歩いていた。


10分ほど歩いてたどり着いたのは、小高い丘の上に作られた大きな公園。

その公園にいくつか設置されている木造のベンチに腰掛けた柳生は、背もたれに体を預け、静かに深呼吸をする。

そのまま夜空を見上げ、瞼を閉じた。


花壇にならぶ、季節になると咲き誇るだろう花たちはひっそりと佇み、風に揺られる木々の葉擦れの音が、闇に吸い込まれるように消えていく。


……落ち着く。

やはり、疲れていたみたいだ。


その時不意に、草木と風のざわめきの中に別のものが混じった。

はっとして音のした方を見ると人がいた。


何故彼がここに……?


それは柳生が見知った人物だった。

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