小説

□Buon natale
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噴水のある広場から10分ほど歩いた所に、一際大きなホテルが建っていた。
そこがディーノの泊まっているホテルだった。



中に入ると落ち着いていて、しかし高級感のある広いロビーがあり、空調が良く整っていた。
左手の方にフロントがあって、ディーノは鍵をもらいに行っていた。


「はぁ〜…」

最近、すれ違ってる気がするなぁ…

そんな事を思いながら雲雀は、ため息をつく度に何かが崩れ落ちるような感覚に襲われていた。


「恭弥!行こうぜ!」

ディーノはそう無邪気に笑って、雲雀に手招きした。
ディーノの無邪気な笑顔を見た雲雀は、今考えていた事がバカバカしく思えて、考えるのをやめた。



ディーノの泊まっている部屋に行くと、一人では広すぎるくらいの部屋だった。

「とりあえず、そこの椅子にかけろよ。」

ディーノはそう言いながら、近くのソファに指をさした。
そのソファは、見るからに高級品で、座ってみると、とても肌触りが良かった。


コトッ。

ディーノは雲雀の分の紅茶をソファの前のテーブルに置くと、雲雀の隣に座ってコーヒーをすすった。

スッ…

雲雀はテーブルに置かれた紅茶のカップで、冷えた手を暖めた。

「…ねぇ。一つ…聞いていい?」

雲雀はそう言ってディーノの方を見た。
暖めた手はジンジンと痛いくらいに脈打った。

「なんだ?」

とディーノは一言言うと真剣な顔で雲雀を見た。

「…僕の事、好き?」

そう言った雲雀はどこか儚げな顔だった。

「当たり前だろ?」

ディーノはそう言って雲雀の頬に触れて、優しく撫でた。

「僕と付き合ってるのは…遊び…じゃないよね。」

不安そうな顔で雲雀はそう言うと、ディーノの目をじっと見た。
その目は震えていて、潤んでいた。

そんな雲雀にディーノは胸がいっぱいになって思わず抱き締めた。


ゴトン

雲雀の持っていた紅茶の入ったカップは床に転がって紅茶が零れ出した。

「遊びな訳ねぇだろ…」

そう言ったディーノの声は切なそうに掠れていた。

雲雀は抱き締め返して

「疑ってた訳じゃないんだ…。ただ…怖かったんだ。」

と言った。

「…。ごめんな。心配ばっかかけて。」

と言ってディーノは抱き締める腕に力を込め

「俺は恭弥の事が好きだ。愛してる。…だから、そんな悲しい顔をしないでくれ。」

と続けた。
そして、ゆっくりと向き合ってディーノは雲雀に口付けた。

「っ…。あなたの唇、コーヒーの味がする。」

キスは甘かったけどね。と雲雀は言って少し微笑んだ。
微笑んだ雲雀はとても綺麗でつい見とれてしまう。

「何?僕の顔に何かついてる?///」

と雲雀は言ってディーノから少し目を反らした。
少し照れ臭そうにディーノは

「恭弥…綺麗だなぁって思ってな。」

と言って頬を掻いた。


「恭弥。Buon natale(メリークリスマス)」

ディーノはそう言って再び口付けた。

それは甘い甘い味がした。




end.



オマケ→



 
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