小説
□七夕
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夜は少し涼しいといっても、夏真っ盛りの7月に入っていた。
蒸し暑いせいか雲雀はなかなか寝付けずにいた。
ボーっと遠くで鳴いている虫の声を聞いていたが、雲雀はふとカレンダーに目を向けた。
「(明日は七夕か…)」
七月七日の日付を見ながら、雲雀はそう思った。
今までの彼は、戦う事意外には興味を示さず、その日に何があるなど考えた事もなかった。
ただ校則違反を見つけては叩きのめしたり、風紀の仕事をするだけだった。
他人の事なんか気にも止めない。
興味なんてない。
そう思ってきた。
ディーノと出会うまでは…
七月七日…
「恭弥ぁ〜!!」
元気に廊下を駆け抜けるのは言わずと知れたディーノだった。
しかしこの日は何か大きな物を持っていた。
派手に応接室のドアを開けたディーノが持っていた物は笹だった。
雲雀は溜め息を吐くと
「あなたは何時も行事がある毎に僕と祝いたいみたいだけど、僕にとっては良い迷惑だよ。」
と言いつつも嬉しい雲雀だったが、仕事をしていたため、ディーノがいては集中出来ないのでシッシッと手でディーノに軽く合図をした。
だが、当の本人は少し落ち込むだけで応接室から出て行こうとはしなかった。
雲雀は再び溜め息を吐くと無視を決め込む事にした―――
午後六時…
「グスン…」
放置され続けたディーノはソファの上でうずくまってグレていた。
「はぁ…終わったよ。」
雲雀は書類をまとめると机に積み重ねてディーノの方へ歩み出た。
「ねぇ…聞いてるの?」
ディーノは揺さぶられても動じなかった。
「ねぇ!返事ぐらいしなよ!」
「……………恭弥…遅い…」
ディーノは突っ伏したままそう言った。
雲雀は溜め息を吐くと
「いい加減いじけてないでくれる?」
と言った。
ディーノは
「恭弥が謝ってくれたらいじけるのやめる。」
と言って雲雀をじっと見た。
雲雀はしばらく考えたあと
「………………。」
また考え始めた。
三分後…
「しょっしょうがないなぁ///」
と言って小さく
「ごめん…///」
と言った。
その途端にディーノの機嫌はコロッと直った。
そして
「恭弥ぁ〜月見しようぜぇ。」
と言ってディーノは抱き付いた。
「バカ…」
と小さく雲雀が呟いたのはディーノには聞こえていなかったようだった。
そして、その後お互いに願い事を短冊に書いたり、月を見ながらただ寄り添っていた。
end.
→おまけ&あとがき