小説

□Buon natale
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夜の空に雪がちらちらと降りだす頃、街の恋人達は幸せな時間(とき)を過ごす。


「(群れてる。咬み殺したい…)」

イルミネーションが周りをかざる噴水のそばで、雲雀が佇んでいた。


―――明日、7時にあの噴水の前でな!

「嘘つき…」

そう呟くだけで、息が白くなる。


あの人は、必ず7時に来るって言った。
なのに…

今はもう7時46分…。
もう1時間近く待つのに、あの人の影すら見えない。

「…遊ばれてるのかな?僕。」

信じたくない。
ディーノは本気で僕の事を愛してくれている。

そう何度考えても、それは根拠のない、ただの思い込みに過ぎなかった。


そんな事を考えていると、胸が締め付けられるようで苦しい。
本当はどうなのだろうか。
雲雀は、そんな気持ちで胸がいっぱいになった。
遊ばれてたらどうしよう…

そう思っても、本人に聞くだけの勇気もなくて。
だから結局、今まで聞く事が出来なかった。

「はぁ〜」

パチン

携帯を開いて時間見た。

8時10分…


やっぱり来ないのかなぁ?

そう思って帰ろうろした時

「恭弥!!」

愛しい人の声が聞こえた。


「ディーノ!!」
「遅くなってごめんな?」

ディーノはそう言って雲雀の手を両手で包み込んだ。
包み込んだ手は冷え切っていて、微かに震えていた。

「恭弥。ごめん。ごめんな…」

ディーノは謝りながら雲雀を抱きしめた。


「ディーノ…」
「どうかしたか?」

ディーノは雲雀に呼ばれてふと雲雀の顔を覗き込んだ。


すると、そこには悲しそうな雲雀がディーノを見つめていた。

「恭弥…?」

ディーノが不思議そうに雲雀の名前を呼ぶと

「人…殺したの?」

と悲しそうに答えた。


ズキン…


恭弥には…あんまり…言われたくなかった。

好きな人にそんな事を言われて、ディーノは胸が締め付けられた。

「…あぁ。」

きっと今の俺はすごく情けない顔をしているんだろうな…

「ディーノ…ごめん。そんなつもりじゃ…」

ただ、あなたには似合わないにおいだから…

嫌だったから…

「本当は…ディーノに…人殺しなんて…してほしくない。」

雲雀はそう言って、真っ直ぐディーノを見た。

「恭弥…。俺だって…出来ればしたくない。だけど…」

ファミリーのために…
殺るしか…ないんだ。

「キャバッローネの、ボスだから。」

そう弱々しく、ディーノは答えた。

「っ…!ぼっ僕は、そんな弱虫を好きになった訳じゃないよ。」

と目を反らしながら、慌てて雲雀は言った。

「そう…だな。あはは。…ここ、寒いだろ?ホテルに行こうぜ。」


こうして二人は、ディーノが泊まっているホテルに行く事にした。



 
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