小説

□触れたくて…
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触れたくて…

でも、

触れられない…

俺の手は、汚れすぎてしまったから…


「あなた、また手加減してるでしょ?本気で殺らないと、この指輪捨てるよ?」
「分かった。本気で戦うから、その指輪は捨てるな。」

この指輪が、唯一俺と恭弥を繋ぐモノだった。

そして、守護者の証…

本当は、恭弥には…“俺達の世界”に入って来てほしくなんかなかった。
だが、これは俺が決めた事じゃない。

ボンゴレが決めた事だ。

いくら俺がキャバッローネのボスでも、ボンゴレの問題に口出し出来るはずがない。

「…あなた、いつまでそうしているつもり?あまりボーッとしていると、咬み殺すよ?」
「あぁ。わりー。」

そう言って、俺らは武器を構えた。

恭弥の細くて、白い腕は俺と戦うたびに、赤く痛々しげに傷付いていく。

恭弥も…
俺と同じように、
手を…汚すのか?

「…いくぜ。」

カキィーン…


ピタッ

「ん?…どうした?」
「あなた、何か隠してる事がある?」

ドキッ

「…別に、なんもねぇーよ。」
「嘘。何か隠してる。」
「…。」
「いつもは、もっとへらへらしてるのに、今日は何か…無理してる。」

バレてたか…
俺って分かりやすいのか?

「…本当は、恭弥と戦いたくなんかねぇ。」
「どうして?」
「…恭弥が…傷付くから…」

これ以上、お前を傷付けたくない。
“俺達の世界”になんか巻き込みなくない。

「何言ってるんだい?あなたらしくないよ。」
「俺…らしく?」

俺らしいって?

「そうだよ。いつもへらへら笑っていて、何も考えてなさそうで…でも、人一倍周りの事が見えている。そんなあなたが、いつものあなた。」

俺は…
汚れた自分を認めたくなくて…
だから、いつもそんな行動をとっていたのかもしれない…

「…それは違うよ。あなたは汚れてなんかいない。ただ、あなたが思い込んでいるだけ。」
「えっ?」

今、俺の心を…
読んだ?

「声に出してたの、気付かなかったの?」

そうか。
無意識のうちに、声に出していたのか…

「…でも、実際俺はこの手で多くの人を…殺した。」
「本当に汚れたっていうのは、人を殺しても罪の意識を感じない事を言うんだ。」

だけど…

「俺の手はもう汚れてる…」
「人は、何かを代償にして生きている。だから、仕方のない事なんだよ。」
「…たしかに、そうかもしれない。だけど。だけど、恭弥にはそんな事をしてほしくない!」
「…分かってる。あなたが悲しむような事はしない。だから、僕はもっと強くなって、誰も殺さないし、誰にも負けない。」
「恭弥…」
「かっ勘違いしないでよね!僕はただ、本気のあなたと戦いたいだけなんだから!///」
「フッ…。素直じゃねぇな。」
「あなたの方が素直じゃないよ!///」
「はいはい。じゃあ、今度は本気でいくぞ!」
「もちろんだよ。」

カキィーン…

…お前は、誰にも傷付けさせない。
そのためには…
俺が傷付けなくちゃいけねぇみてぇだ。

だから、

早く強くなれ。


end.


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