小説

□サクラの下で
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桜は好きだった。
でも、今は…嫌い。
桜は、嫌な思い出ばっかりだ。


桜なんか…嫌いだ。


「ねぇ、…なんでこんな所に僕を呼び出したの?」
「決まってんじゃねぇーか、花見だよ。花見。」

そう言いながら、ディーノはお弁当を見せた。

そして、僕がディーノに呼び出された場所は…

桜の木が沢山ある、広場のような所だった。

「…僕に対する、嫌がらせ?」
「?何言ってんだよ?こんな綺麗な桜…あっ!…ごめん。たしか、恭弥は…嫌いだったんだよな…桜。」

ディーノは肩をすぼめて、謝った。
とても僕の年上とは思えない。情けないな。

本当にディーノって部下がいないと…いや、いても鈍感って言うか、なんと言うか…

「はぁ〜…あなたは本当…バカだね。」
「なっ!恭弥ぁ〜!?うぅ〜」
「それに、子供だね。」
「なっなんでだよ!?年は俺の方が上だぞ?」

行動の一つ一つが子供っぽいから、見ていて飽きない。

「良く考えないで行動する所とかが。」
「ガーン!んな事言われても…恭弥には…(もごもご)…」
「僕には…何?」
「恭弥には、綺麗な桜が似合うから…」

ディーノの顔が、少し赤くなったような気がした。

「フッ。下らないね。」
「なっ!!ひでぇ〜!俺が一生懸命考えたのに〜!」

こうやってムキになる所も子供っぽい。

「別に…あなたがいれば…それで、いい。」

あなたがいれば、他には何も…いらない。

「どういう…事?」
「桜なんか、別にいらないって事だよ。」
「…フフッ。それはダメだ。やっぱり、恭弥には桜が一番だ。…嫌な思い出なんか、忘れちまえよ。」

簡単に言ってくれるね。

「そんなに簡単に忘れられたら苦労しないよ。」
「じゃあ、俺が嫌な思い出をいい思い出に変えてやるよ。」
「本当にそんな事出来ると思っているわけ?」
「おう!」

自信満々…
つい吹き出してしまった。

「プッ…クスクス。」
「なっ!そんな笑わなくてもいいだろ!」

子供だ。
考えも行動も発言も。

「クスクス、子供だね…」
「うるせぇ〜!(でっでも、笑ってる雲雀…可愛い!)」

ディーノ、明らかに顔が赤い。

「何見てるの咬み殺すよ。」
「ギクッ!べっ別に〜…それより、こっち来いよ!」

半強制的に僕は、ディーノに引っ張られて桜の木の下へと連れていかれた。

「やっぱ、綺麗だな!」

ディーノは整った綺麗な顔なのに、へにゃっと笑うからもったいない…
ディーノの方が桜が似合っているかもしれない。
などと考えていると、ディーノが不思議そうに顔を覗き込んできた。

「どうした?」

顔立ちはとても綺麗で大人なのに、覗き込んできた顔は小学生を思わせるような物だった。

「別に何でもない。」

今考えていた事を話したら、きっと調子に乗るだろうから言わないでおく。

「?そうか?」
「うん。何でもない。」

こんな会話をしながら、僕らは桜の木の下でお弁当を食べていた。


桜なんか…嫌いだ。


でも…


ディーノと一緒なら…悪くないかもね。


「恭弥ぁ〜?何にやけてんだ?…分かった。俺と弁当食うのがそんなに嬉しいんだな。」

まぁ、当たってない事もないけど…やっぱり鈍感だね。

「まぁ、いいや。そういう事にしといてあげるよ。」
「?なんだよそれ?当たってんのか?」

やっぱりディーノはからかうと面白い。

「さぁ?どうだろうね。」
「なんだよ〜!はっきりしねぇ〜なぁ〜」
「…ワォ。あなた、どれだけこぼしてるの?」
「あっ!…本当だ。」

ディーノの前は、食べ物が盛大に散らばっている。
…ある意味芸術だね。

「まったく…そういう所も子供っぽい原因なんだよ。」

どこまで子供なんだろう…

「…(反論出来ねぇ…)」
「…早く片付けなよ。」

ズルッ。ドンガラガッシャン!

「なっ、何やってんの?片付けるどころか、余計汚くなってるし…もったいない。」

…いろんな意味で。

「いってて。うぅ〜。恭弥ぁ〜手伝ってくれ〜」

…っていうか、ディーノがいたら終わる物も終わらなくなるから逆に僕一人でやった方がいいと思う。

「…後は僕がやっておくから、ディーノは何もしないで。というより、もう動かないで。」
「ひでぇ〜!そりゃ〜言い過ぎだぜぇ。」
「いや、間違った事なんて言った覚えはないよ。ディーノが片付けてたら、終わる物も終わらなくなる。」

間違ってないよ。
…絶対。

「恭弥ぁ〜!」
「ちょっ!抱きつくな!…いい加減にしないと咬み殺すよ!」


こうして僕らは、桜の木の下で思い出を作っていくのだろう。
悪い思い出を、良い思い出に変えながら…


end.




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