LONG fast

□MP:29 ティアドロップス
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「愛花ちゃん!!」
「凛ちゃん」
「C組の柊…それに加水さんも」

不審そうな眼で見てくる大門に「お弁当食べるトコ探してて」と誤魔化す愛花

「嘘言ってんじゃねー!C組の休憩場所はずっと向こうじゃねーか!俺らの事探ってたんだろ
 ずいぶんせこいマネすんじゃねーか!」
「ち…違うよ!!」

がなる小石川にぐっと身を縮こませる凛
相変わらず巨体で怒鳴る姿には恐怖を感じさせられる
だけど、それを止めたのは意外にも大門だった

「まあ待てよ。別にここは立入禁止なワケでもない。第一次の試合はC組とやるワケじゃないだろ
 …まあ決勝にそなえて僕らをスパイしてたんなら光栄な話だけど?」

言い方は穏やかだけど随分と自信過剰な言い方
確かに彼は前々から自信満々なタイプではあったけど
何かが凛の中でひっかかる

「ほんとに違うのスパイなんて!それにC組はスパイなんてしなくてもちゃんと実力で戦えるよ」
「へーたいした自信だね。でもそりゃ九澄や加水がいるからだよね?
 やつがいなきゃそれほどの敵とも思えないけど?正直君が選手になってるくらいだもんね」

(どうして…)

「君の魔法ってたしか視覚系の魔法と使い勝手の悪い衝撃波みたいなやつだよね。このクラスマッチでは役に立ちそうもない
 うちのクラスだったらまず選ばれる事はなかっただろうね」

(この人達は…)

「ハハハ。おおかた親父が柊先生なんで特別扱いされてんだろーぜ。魔法の成績も水増しされてたりしてなー」
「かーいいなオイ。俺も先生の子に生まれたかったぜ」
「ひどい…そんな。私は…」

泣き出しそうな表情の愛花
追い打ちをかけるように小石川が指を鳴らした

「とにかく俺らはC組なんざ恐れちゃねーって伝えとけよ!!
 魔指弾!!!」

小石川のお得意の魔法は愛花の弁当箱に命中し、宙を舞う
あ、と愛花が顔を上げたその時二人の横を何かが通り過ぎた

空中で弁当箱を胸に抱え、小石川を踏み台に着地する九澄

「九澄くん!!」
「たは〜!!無事だった…」

とりあえずキャッチした弁当の安否を確かめ感涙する九澄
顔を足蹴にされた小石川。手で押さえつつ彼を凄んだが迫力がない
それよりも逆に睨み返す彼の方がよっぽど怖い顔

「柊の弁当を潰そーとしやがって…ぶっ殺されてーかコラ」
「んだと!?」
「凛も凛だ。こんな奴らとっととブッ飛ば…凛!?」
「凛ちゃん!?」

彼女の実力ならこいつら3人まとめてぶっ潰すなんて容易だろうに
そう言おうと彼女を見て思わず弁当を取り落とすところだった
愛花もぎょっとした

ぽろぽろ

「加水…?」
「おっおい!!凛!?てめーら何しやがった!?」
「凛ちゃんどうしたの!?大丈夫?どこか痛いの!?」

無言で涙を流す凛に流石のF組も驚かざるを得なかった
慌てふためく九澄と愛花
それを見て乱暴に涙を拭う凛

「大…丈夫。ちょっと、悲しかっただけ」
「悲しい?」
「いいの。行こ…」

九澄と愛花の手を引いて帰ろうと促す凛
そのただならぬ雰囲気に先程の怒りはどこへやら、気遣うような瞳の二人

一瞬だけ大門と目があった
だけどすぐに視線を反らして戻りだす。

「本当に大丈夫?」
「何か言われたのか」

「大丈夫だよ」

そう、ただ、少しだけ
人の心を抉る言い方に傷ついてしまっただけだから



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