LONG fast

□MP:25 記憶のトビラ
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「ん……あれ?ここどこ?」

一瞬視界が真っ白になったかと思うと校長室とは違う場所へと来ていた
薄暗い部屋
朽ちたどこかもの寂しい場所

だけど自分はこの場所を覚えてる

「ああ、そうだ…わたし……」

ずっとずっと前にここを訪れていた
大好きな場所だった

「どうして…?」

思い出せ
自分の過去なんだから覚えている筈
ぎゅうと固く目を閉じて記憶を必死にたどる凛

「凛」

自分を呼ぶ声
懐かしい声
大好きだった、声

(え?)

低いけど優しく自分の名前を呼ぶその人は…

(わたしの大切な―…)


「…ゃ……」
「加水、もう戻ったのか」
「今のは…」

なんだか眠った後の目が覚めた時のような感覚
別の場所にいたはずなのに気が付いたらまた校長室に戻って来ていた
一体何があったのだろう

「記憶逆流(メモリーバック)の応用だ。昔のお前の記憶を少したどらせていた」
「そんな事ができるんですか?」
「本当はもっと大掛かりな魔法なんですが…今回は思い出す事のみが目的ですから」

何か思い出せましたか?そう尋ねられて閉口する
思いだした事は思い出した
だけど…

「言いたくない事でしたら言わなくても構いませんよ」
「違うんです!ただ、その…自分の中でもまだ整理がつかなくて」

思いだした事はたくさんある
だけどどう説明すればいいのかまだ頭の中で収拾がついていない

「言うのはいつでもいい。気持ちに整理ができなのならまた来なさい」
「そうです。私達は何もあなたの思い出を掘り返したいのではなく、ただ貴方の魔法の原点がどこだったのかを知る事で加水さんの不安を取り除いてあげたかっただけですから」

胸に沁み込む優しい言葉
少しだけ泣きそうになりながら頭を下げた

「―ありがとうございます」

今はまだ、自分の胸の中にだけ…
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