LONG fast

□MP:25 記憶のトビラ
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「あ、あの…どうしてわたしだけ残されたんでしょう?」
「大したことじゃない。ただ少し聞きたかっただけだ」

びくびくしつつ柊に尋ねる凛
九澄はもう教室に戻ったというのになぜ自分だけここにいるのだろう
その顔は不安に満ちていた

「どうですか?学校は」
「?最初は不安でしたけど…今はとても充実していて楽しいです」
「それはよかった」

花咲の柔和な笑みでようやく緊張が和らいでくる
でも一体どうしていきなりそんな質問を

「柊先生から伺っていました。九澄くんが入学してくるまで殆ど一人で過ごされていたようですので」
「あ…」

自分の性格上誰かに自分から話しかけるなんてできなくって
おまけに入学してすぐゴールドプレートになったもんだから周囲から敬遠されて
んなもんだで九澄が事故とはいえ入学するまでの約一カ月は友人は一人もいなかった
思い出す度に涙が出る

「高校生活だけで不安だったでしょうに、いきなりゴールドにされては周囲の目も気になったでしょう」
「………はい」

言われた通り
毎日泣きそうな思いで学校に通っていた

「だから…大賀が来てくれて本当に嬉しかったんです
 甘えたまんまじゃいけないと分かっているけど…一人じゃ何もできなかったから」
「きっかけがどうであれ、その後頑張ったのは加水さん自身の努力ですよ
 では本題に入らせていただきますね」

いきなり真剣な表情になる花咲
一体どういった理由で凛を残したのだろう
自然と自分も緊張が走った

「加水、お前の魔法は昔訓練した事があると言っていたな」
「あ、はい」
「それはどこで行っていたか覚えていますか?」

ふるふると首を振る凛
魔法を昔教わったのはちゃんと記憶がある
だけどどこで、誰に教わったのかは全く覚えていなかった

いや…

「あれ?でも…」
「どうした?」

いきなり様子の変わった凛
何かを思い出したのかうーんと唸りだした

「大木先生の試験…あまり覚えていないんですけど。あれがすごく大事な事だったように思えて」
「魔法試験ですね。あれは時間内に出てしまえば記憶はなくなりますが…」

余程大事な事だったのだろう
少しだけだけど彼女は心にそれが残っていた
ふむ、と考える花咲

「少し調べてみてもよろしいでしょうか?」
「え?わ、わたしは構いませんけど…」

どうやって調べるのだろう。やっぱ魔法か
そう思った時には既に柊のプレートが凛に向かって投げられていた
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