way catch of stray cat girl

□The beautiful manager of tennis
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朝から土砂降りの雨。
それを見て苛立っているのは、氷帝一の俺様―もとい、跡部景吾。
そして、滅多に自分から惚れる事など無い跡部が惚れて、手に入れようとしているターゲットは、机に蹲ってすやすやと寝息を立てている、神崎桜子。
どんなに口説いても絶対に落ちない。
その所為もあって、苛ついているのだ。





The beautiful manager of tennis





ちっ、何だよこの雨…。
あいつにテニスしてるかっこいい俺様を見せてやろうと思ってたのによ…。
これじゃ出来ねえじゃねえかよ。
どうすればあいつは俺に惚れるんだよ…。
いらつく…サイアクだ…。


跡部が桜子を口説き始めて、かなり時間が経っているが一向に振り向く気配は無い。
一体何がいけないのだろうか。跡部自身に問題があるのか。
まあ、確かに問題はあるけれど…。それとも桜子が特殊なのだろうか。
氷帝学園の有名人に好かれているというのに。
やはり桜子は気紛れな野良猫なのだろうか。
気が向いたら、跡部の女に…ただ、今は気が向かないだけなのだろうか。
不思議な人を好きになったものである、跡部景吾は―。


* * *


二限目から爆睡の桜子。
桜子が起きたのは、ちょうど四限目が終った頃。
ふと桜子が窓の外に目をやると、朝には土砂降りだった雨が嘘のように止んでいる。跡部の恨みの力だろうか…。
より一層清々しさが増している綺麗な青い空。

「おい」

声と共に、桜子は軽く頭を小突かれた。
相手の顔を見なくても声だけで解る。毎日毎日嫌と言う程聞かされている声。

「何?」

跡部の方に向く事無く返答。

「お前、毎日よく寝るな。飽きねぇのか?」

跡部は腕を組み、桜子の隣の机に浅く腰掛けた。
一方桜子は、どうでもいい事を聞くなとは思ったが、寝起きの為か脳が正常に働いていない。頭がボーっとしている。

「授業受ける方が飽きる」

言い終わった瞬間の口元を押さえながらの欠伸。
跡部を一瞥もしようとしない。
真っ直ぐ黒板を見つめている、と言うよりボケーっとしている。

「今日、放課後テニスコートに来い」

いきなりの命令に、正常に働いていない頭は、認識しきれていない。
まだボケーとしている。

「…何で?」

理由を聞くが跡部は答えを言わなかった。

「いいから来い、絶対にな」

人差し指を桜子に向け念を押した。そのまま桜子から離れて行く。
正直言うと、跡部は桜子が本当に来る事をあまり期待してはいない。いつもの気紛れでもしかしたら来るかも知れない。跡部らしくない考えだ。


* * *


放課後。
正レギュたちは部室に集合していた。宍戸亮と樺地宗之を除いて。まだ練習せずに寛いでいる。

「朝はあんなに土砂降りだったのに、急に晴れやがって」

ぶつぶつ文句を言っているのは、アクロバティックで有名な向日岳人。こう見えても氷帝正レギュラー。

「岳人、さっきから喧しいわ。少し黙っときい」

横から口を挟んだのは、岳人とダブルスペアを組んでいる忍足侑士。本当に煩そうな表情で岳人を黙らせようとしている。

「だってよぉ、なぁ跡部」

岳人が助けをも求めるような顔で跡部に話を振った。しかし、跡部は綺麗に無視。
俯いて何か考え事をしている最中。勿論、跡部が考えている事は、今は桜子の事しかないだろう。すると岳人が遊び半分で跡部に向かって、そこら辺に落ちているボールを軽く投げ付けてみた。見事跡部の頭に命中。先程まで考え事をしていた表情が一瞬のうちにして、不快の色に染まっていく。

「向日…俺様に向かってボールを投げ付けるとは、いい度胸してるじゃねえか、アーン?」

明らかに怒っている。誰が見ても表情だけは怒っている。でも殺気は感じられない。

「だって、跡部俺を無視しやがった」

正直にボールをぶつけた理由を話す。無論二人とも本気でキレているわけではない。ちょっとした冗談のつもり。
跡部が立ち上がり岳人に歩み寄ろうとしていると、忍足が独り言のように、ため息混じりに呟いた。

「アホやな…」

その時、入り口の方から声が聞こえて来た。

「ねぇ…」

皆、一斉に入り口に注目。声の持ち主が女性なので尚更だ。
そこには少々、機嫌を損ね気味の桜子が、開いたドアに、腕を組みながら寄り掛かっていた。
誰も気付かなかったのだ。勿論、部室にいたレギュラー陣は一目で桜子に視線を注いでいる。
まるで、場違いな場所に降り立ったような、神秘的な美しさ。
一瞬で、大勢の男性の目線を奪う事の出来る。だが、桜子に自覚は一切無い。
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