Love Game〜恋愛ゲームの勝利者〜

□Loving you.
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ゲームの結末なんて…





誰も予想できない。





第八話
*Loving you.*






桜子の姉と話してから、早くも一週間が経過。
あれから、何度か保健室を訪れて桜子の様子を問い質すが、相変わらず塞ぎ込んでいて、泣いてばかりだと言う。
桜子の姉は結婚していて、今は桜子とは暮らしていない。だけど、妹が心配で今だけは一緒に居るとも、話してくれた。

段々、信用が前のように戻って来た。桜子の事も話してくれるし、表情が和らいできている。
桜子の姉は大丈夫。今の心象は、悪くない。
保健医も、教員には変わらない。それに、一度信用を無くしている。真摯な態度で行けば、信用なんてすぐに取り戻せる。しかし、今の一番の問題は桜子だ。どうすれば、また桜子を抱き締められるのか…?

けれど、桜子が泣いている内はいい。まだ、自分に気持ちがあると言う証拠にもなるし、別れを望んでいないと言う事にもなる。
まぁ、その前に桜子から「別れましょう」と言われて、「解りました」なんて言う訳が無い。
意地でも別れない。桜子を手放す気なんて、全く無い。

(何で別れなきゃならねぇーんだ)

浮気がばれた時、桜子は「別れよう」なんて言わなかった。
別れを切り出されて、素直に別れたら浮気を認めた事になる。そんな印象の悪い別れ方なんて、絶対にしたくない。けれど、桜子は別れを切り出さなかった。それどころか、「別れない」と言い切ってくれた。
そこまで、跡部を好きなはずの桜子が、意味も解らず「別れよう」と告げてきた。
桜子の身に一体何があったのか…。皆目検討も付かない。

あれから、学校へ来ていないのか桜子には会っていない。保健室に行っても、いつも桜子の姿はない。その代わりに、嫌な顔一つせずに出迎えてくれる、姉の話を聞いていく。
探し出したって、口先だけじゃ何も解決しない。口ではなんと言える。だけど、それじゃ桜子を癒せない。
理由を聞いたって、答えてはくれないだろうな…。簡単に応えられる事なら、とっくに話を聞いているはずだ。
本当に、どうしたら良いのか解らない。原因が解らない以上、自分に出来る事は何もない。ただ、「別れない」と言い続けるだけ。
何も出来ないのが悔しくて、跡部は再び保健室へと迎う。
自分の意志は伝えた。だけど、桜子は頷いてくれない。どうやって頷かせればいいのか解らなくて、何か方法はないのだろうか…。


* * *


授業なんて聞いている場合じゃない。こんな状態で受けても、何にも頭に入らない。
それに、授業なんて聞かなくても教科書を読めば事足りる。
教師の印象を良くする為に、成績は常に首席。抜かりはない。

「失礼します」

「あら跡部君」

穏やかな笑みで迎えてくれた。
浮気をした直後からしたら考えられない対応だ。
いつも、睨み付ける様な視線が痛くて、保健室に寄れなかった位。まぁ、寄る用もなかったけれど…。今じゃ信用されているから、前の様に暖かく迎えてくれる。

「桜子は…来てないですよね…」

「えぇ。学校に来ているのかも解らないわ。今日は、ここには来ていないから」

「そうですか…」

探す宛が無くて、跡部は視線を伏せた。自分の彼女なのに、どこを探したらいいのか解らないなんて、情けなさすぎだろ…。

「授業はいいの?」

「桜子の事が心配で…。それどころじゃありません」

「ありがとう…。そんなに心配してくれて…。桜子が知ったら、少しは元気になってくれるのに…」

どこにいるか解らない。
クラスの子に聞いても、授業には出ていないと言われた。来ているのか来ていないのか…。けど、来ているとしたら、桜子の拠り所は保健室しかないはず。ここにも来ていないと言う事は、学校には来ていないのだろう。
こんなにも、心配している事を伝えたい。けど、逃げる女を追うなんて性に合わない。
それに、泣いてしまう女に無理矢理話を聞きだすなんて、そこまで必死になる性分でもない。
別れるつもりはない。その意志は伝えたのだから、傷付いた桜子にしてやれる事なんて無い。兎に角今は、姉の信用を取り戻せただけでも良しとしようではないか。

「そうだと良いんですけど」

「跡部君しか支えはいないんだから。頼んだわよ」

「はい…」
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