way catch of stray cat girl

□Trauma
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桜子は、何が何だか解らなくなってきていた。
けれど決して、その動揺は表情や行動には出ていなかった。

「何で解るかなぁ…いつもと同じ様にしてたのに…」

跡部の腕の中で呟いた。しかも桜子の言葉は跡部の言っている事を肯定している言い方だ。

「桜子?何があったんだ…」

何があったかと聞かれれば、確かにあった。

―両親の離婚…―

それ以外であるとすれば…。

離婚した事によって、自分が本当に独りぼっちになってしまった…

くらいしかない。けど、跡部だけには言いたくない。


何故…。


何故、跡部に甘えたくないの?


甘えたくないと言う思いが疑問を作り出した。
急に桜子の心臓の音が加速してきた。

今…気付いてしまった……

「…何でもない。あったとしてもあんたに言う事じゃないし…離して」

跡部の腕からするりと抜けると、出入り口を目指し、歩き始めた。

「桜子…あいつ…俺の顔みようともしねぇ…」

桜子は一度も跡部の顔を見ようともしなかった。
その行動が桜子の身に何かがあった事を、確実に跡部に伝えていた。

「………ハッ…俺様らしくねぇ…」

手摺に背中を預け、自分を嘲笑うように笑った。
一人の女にこんなに必死になっている自分を…。
此処まで惚れこむとは実際思ってはいなかった。だからこそ、愛しい故に桜子の為に何かしてやりたい。けれど桜子が何も言ってくれなければ、何もしてやれない。

それが悔しくて、悔しくて…。
けれど、手に入れると宣言したあの時から…。

ずっと桜子だけを見てきた…。

跡部だから、桜子の異変に気付く事が出来た。
桜子はそんな事にさえ、気付いてないし、気付きたくもなかった。


跡部の腕から逃れた桜子は、いまだ鼓動を早めている胸を落ち着かせようとしていた。そして先程の疑問の答えを見つけていた。

いつも冷たくあしらっていたのに…。
しかし、それは淋しいの裏返しで…。
無言の傍にいてほしいという、メッセージっだのかもしれない。

傷付きたくないから…。
だから、気付かないフリをしていたのかも知れない。

きっと跡部に甘えたくないと言うのは、失うのが恐い存在だから…。

さっき抱きしめてくれた時だって、鼓動が高鳴った。

初めて、抱きしめてくれた…。
だから、気付きたくない気持ちに気付いてしまった…。

きっと私は…。
何時からかは解らないけれど、跡部の事を好きになっていたんだ…。
惚れない自信あったのになぁ…。

しかし気持ちを伝えてしまったら、失うのが恐くなってしまう。
ましてや今更、好きなんて言えない…。

跡部は何時だって私の傍にいてくれた。
片時も離れずに、いつもそばにいてくれた。

傍に…。隣にいてくれるだけでいい…。
永遠の愛など、有りはしないのだから…。

これ以上、失う者など何も無い。
自分のものになったら、いつか手放す時が必ず来てしまう。

その時に傷つかないように…。

しかし、今、気付いてしまった。

跡部景吾に心惹かれていると…。
跡部がいつも傍にいてくれた事で淋しさから逃げられた事も…。


それは紛れも無い真実だから…
桜子に突き付けられた、辛いだけの真実…。


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