way catch of stray cat girl

□The beautiful manager of tennis
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「何回叩いたと思ってんの?」

どうやら何回も叩いて合図したらしい。けれど一向に誰も出る様子が無いからそのまま帰ろうかと思ったが、多少むっと来てドアを開けたのだ。
桜子を呼んだ張本人の跡部は、冷静さを装うけれど内心かなり驚いていた。
期待していなかった相手が、自分を訪ねて来たのだから無理も無い。
その驚きを顔に出す事は無かった。けれど必死に隠している様子は無い。さすが跡部。あくまでポーカーフェイス。

「本当に来るとはなぁ」

桜子がかったるそうに言葉を放つ。

「あんたが来いって言ったんじゃん…暇だしついでに寄ってあげよと思っただけ…」

壁に寄り掛かった体勢のまま、微動だにしない。
本当についでに寄っただけ。帰ろうと思い、下駄箱を出て、横を見たら、視界に入ってくるのはテニスコート。桜子にとっては、行かなくても行っても余り変わりがないし、早く終らせて帰りたかったと言うのが桜子の思っていた事だった。
ついでにと言う言葉に、跡部はピクリと眉を動かしたが、怒りを顕にするような事ではない。来てくれただけでも、ありがたいと思う事にした。
今まで桜子に目線を送り続けていたレギュラー陣が我を取り戻した。

「…誰?跡部の女?」

岳人が罰が悪そうに聞いてきた。一瞬でも女に見惚れていた事への照れ隠しのように見えるのは、言わないでおこう。

「アーン?お前ら知らねぇのかよ」

跡部が岳人に振り返りながら言う。余裕の笑みを浮かべて。
桜子が転入してからかなり日にち、時間が経っている。その間、岳人は桜子が転入して来た事は全く知らない、という事は桜子と接点は無かったと言う事になる。実質的には、跡部と桜子の方が一緒にいる時間が長い。そして桜子と跡部との方が仲が良い、いや実際仲良くないし、仲が良いと言う言い方は似合わないような気がするが…。しかも同じクラス。自分の方が桜子に近いと言う事からの笑みなのだ。と言うより、桜子に一番近い人物は学園内では跡部だろう。
その笑いに本能的にムカついた岳人は顔を顰めてしまった。

「この娘(こ)…もしかして噂になっとる転入生やないか?」

忍足が思い出したように話に入って来た。

「噂?」

跡部は不思議と噂に付いて全く知らなかった。だから余計に気になっているのだ。

「なんや…えらいかわええ子が転入してきはったとか…」

跡部が桜子を落とそうとしていると言う噂は、忍足の耳には入っていないようだ。
裏で跡部親衛隊の人々が揉み消しているのかも知れない。

「じゃぁ、あいつの事だな」

振り返る事はせず親指で桜子を指差す。
二人の会話を聞いていた桜子が口を開いた。

「ねぇ…早く部活始めたら?早く帰りたい」

本当に早く帰りたいらしい。
桜子が想像していたのと違い、ここに来れば練習が始まっていると思い、一瞬だけ見ようと覗いた。けれど、実際は始められていない。余計な手間をとってしまった。

「そうだな、俺様のかっこいい姿見て精々惚れてろ」

跡部らしい捨て台詞。この台詞を聞けるのはきっと桜子だけ。
部室からラケット片手に出て行った。外には樺地が立っていた。

「うざい…言っとくけど、私あいつの女じゃないから」

レギュラー陣の方に向かって、かったるそうに向き、その場にいた者達を驚かせる発言。

「本当ですか?」

まずは鳳長太郎が驚きの声、と言うより「嘘ですよね」の言葉が隠されているような言い方。

「マジで?」

と向日岳人。

「ホンマかいな!!」

続いて忍足侑士。
芥川慈郎は居るもののベンチの上で熟睡中。何時起きるのか全く解らない。起すまで寝ているだろう。

「あの跡部さんが…まだ自分の物にしていない…」

百戦錬磨な跡部。狙った人を手に入れるのに、三日も必要ない。だから桜子が跡部の女では無いのが不思議で溜まらないのだ。

「じゃぁ…なしてココへ?」

「あいつにここに来いって言われたし、榊からも男テニのマネにならないかって誘われてたし…」

初耳だ。何時の間に誘われていたのだろうかが不思議。たぶん跡部も知らない事だろう。

「マネージャー?」

岳人が思い切り不快な表情をしている。今まで氷帝にはマネージャーなんて居なかったのに何で今頃、と言う意味が込められている表情だ。

「なってくれや!はい決まり!早速榊先生に知らせとかな」

桜子の両手を掴んですごく嬉しそうな顔。全然先程のキャラと違う。しかも、桜子はなるなどと一言も言っていないのに、強制的に決めてしまっている。
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