緋桜恋愛遊戯

□第六話
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こんな汚い街にもいたんだ。この汚さに負けない一輪の華が…。
もういないかと思った。
俺を見惚れさせる女なんて…。
きっと、さっき擦れ違った女が最後だ。
案外…、まだ汚くはねぇみたいだな。
この街も…、女も…。


第六話


市中廻りから帰って来た土方と山崎。挨拶もなしに、土方は自室に閉じこもってしまった。
山崎は相変わらずミントンを楽しんでいる。しかも一人で…。
土方の様子を見てこいと沖田に命じられた隊員に寄れば、今の土方は上の空…だったらしい。

「山崎、土方の野郎はどうしたんでィ?」

一緒に市中廻りをしていた山崎なら、何か解るかも知れないと、庭で一人ミントンをしている山崎に問い掛けた。
深い意味はない。
問い掛けられた山崎は、ニタァーと嫌らしい笑顔を浮かべながら振り向いた。
あくまで平然としていたいのに、ついつい思い出すと、顔がにやけてしまう。

「さっき街中で綺麗な人に見惚れてました。それでしゃないですか?」

「そりゃぁ俺もお目に掛かりてぇもんでさァ。んで山崎は見たのかィ?」

「俺は顔を見てないんです…」

「…役に立たねぇ奴でさァ…」

土方が見惚れる女を一目見たくなった沖田。
どれほどの美女なのか、確かめたくなって来た。
山崎が見ていないとすると、ここで謎の美女を見た者は土方だけとなる。何とも複雑な心境にある沖田。
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