緋桜恋愛遊戯

□序章
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久し振りに訪れた江戸。
一歩足を踏み入れたら、懐かしさが胸に染み渡る。
此処へ来たら会いに行ってみようと、相方には内緒で企てていた事がある。
懐かしさの余り、辺りを見渡しながら歩を進めていく。
昔と変わった事と言えば…、天人が我が物顔で歩き回っている事位。
町並みは変わっていない。
それでも、天人が歩いている事に違和感は感じなかったにせよ、代わりに不快感が沸き上がった。
それだけで私は、少しずつ苛立ちを募らせて行った。
辺りを見渡すと、私の前を悠然と歩いていく衣笠の男に視線を向けた。
表情が見えない故、感情が読み取れない。けれど、気の所為と思える程微かな気遣いが感じられた。
堂々と歩いている天人皆が皆、いい天人とは限らない。何時襲ってくるか解らない天人だって、当然いる。
そんな天人から私を守ってくれている様な気がした。
その証拠に先程から一定のリズムで距離を保っている。なんだかそれが嬉しくて、私は思わず微笑みを浮かべてしまった。
私を守ろうとする男なんて、こいつしかいないだろう。
その気になれば今すぐにでも抜刀出来る。脇差しに構えてある刀は取りやすい様にしてある。
だから、私を守ろうとする男なんていない。自分の身だけで精一杯か、戦えない男には興味は無い。情けなく思える。
それ故に、私の身までをも守れるこの男。私の心は惹かれるに値する程の男だ。
だから、一緒に行こうと思ったんだ。
こいつになら任せられると…。
そう思ったから着いてきたんだ。
一緒に居たいと思える相手は目の前の男。
会いに行きたいと思うあいつは、今頃どこで何してるやら…。
変わっている?
いいえ。
きっと変わってないあいつ―…

To be...

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