他校夢

□有り得ない!
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嫌いなタイプはチャラい男。



…のはずなのに…っ!!





有り得ない!





見た目がチャラい奴は中身もチャラい。十七年の経験でそれを痛い程学んだ。

金髪。ピアス。軽率な態度。
モデルなんかしてたら、余計チャラくなる。そして、そんな奴に限って、中身は空っぽ。頭だって果てしなく軽い。

だから、一切関わらない。関わりたくもない。


なのに…っ!


(どーしてこうなるのよ!!嫌いなタイプを絵に書いたような奴が、何で私の近くにいるのよ!!しかも、同じ部活とかホント有り得ない!!)


なんでこうなるの?
何か悪い事しましたか?


「桜子センパーイ!今のダンク見てたッスか!?」


しかも何!?
何で気に入られてんの!?


私何にもしてないんだけど!!


「見てない」

そう冷静な口調で返しながら、スコアボードを付けていく。


試合に集中しろや!!


シュートを決める度に、いちいち話し掛けてくる。そんな黄瀬に、感情を表に出さずに、淡々と返していくマネージャーの私。
周りで黄瀬目当てに観戦している喧しい女子共は、そんな態度の私が気に入らないのか、事ある毎に、「感じ悪ーい」等の陰口を叩いている。

今だって、何か言っている。
でも無視。好きに言ってて下さい。私は今、女子共の陰口に対し、怒りを燃やしている程暇じゃない。スコアボードを付けないといけない。そして、最大のストレスの原因である奴を、あしらわなくてはいけないのだから。

「んじゃぁ、次は見てて下さい!絶対ッスよ!」

「はいはい」

爽やかな笑顔で試合に戻る黄瀬を、軽くあしらう。そして、直ぐに試合へと集中する。

スピードのあるスポーツだから、一人の選手ばかりを見ている訳には行かない。そんな事していたら、正しいスコアなんて取れやしない。
それを解ってるのか解っていないのか、ちょくちょく話し掛けてくる黄瀬が煩わしい。

いや、解ってないな。
だって、見た目がチャラいんだから、頭はきっとバカに違いない。

あ、でもちょくちょく私の所に来て、コートに戻る度に笠松先輩に絞められているのはいい気味だと思う。ざまーみろ。

っていうか、見てる見てないの以前に、黄瀬ばかりが点を取りまくっているから、嫌でも視界に入ってくる…。
そんでもって、シュートを決めている黄瀬は、認めたくないけれど格好いい。

バスケをしている黄瀬は格好いいと思う。認めたくないけど…。
だけど、それだけ。いちいち注目するレベルじゃない。


「お疲れ様です」

「サンキュー」

試合が終わり、汗を掻いた選手達にドリンクとタオルを渡す。

試合と言っても、同じチーム内での対戦式の練習試合。勝ち負けが重要じゃなくて、選手達の癖や今後の課題等を決めるのが目的。

「黄瀬君以外は、スタミナを付けた方がいいです。後半バテ気味でしたから」

練習メニューを作るのもマネージャーの仕事。そして、今後の課題を監督と一緒に決めていく。

後半、黄瀬に押されて、大半の選手が体力の限界に来ていた。
大会に出れば、黄瀬より強い奴なんてうじゃうじゃいる。だから、黄瀬に追い付けないんじゃ、試合で話にならない。

「桜子センパイ!俺は?俺は何かないんッスか!?」

瞳をきらきら輝かせて聞いてくる黄瀬。正直、欝陶しい。

キセキの世代だか何だか知らないけれど、欝陶しいのは欝陶しい。なるべくなら、相手にしたくない。いや、なるべくじゃなくて、相手にしたくない。

同じ部活じゃなかったら、一生話し掛けない。

「黄瀬君うざい」

「えっ…うざいって…ヒドッ!」

表情を一切変えず、真顔ではっきりと告げた。
感情を表に出すのが苦手だから、あまり笑ったり怒ったりはしない。けど、こいつに関してはつい怒りが押さえられない。

半泣きになっている黄瀬を軽く無視。っていうか、視界に入らないようにする。


はっきり言って、私は黄瀬が嫌いだ。いや、黄瀬だけじゃない。見た目がチャラい奴は、皆嫌いだ。
バカだしアホだし空気読めないし、すぐ言い寄ってきてうざい。
チャラい奴は中身もチャラい。頭の悪い奴や、性格が軽い奴も嫌い。何考えてるか解らない奴も嫌い。無駄にモてる奴も嫌い。
簡単に言えば、見た目がチャラい奴が、嫌いという事。
だから、黄瀬がバスケ部に入ってきた時、正直やめようかと思った。でも、嫌いな奴の為に辞めるのが、何だか負けた気がして悔しくて、結局辞めなかった。

それに、黄瀬みたいな華やかな奴が、たかがバスケ部マネージャーに興味を抱く訳がない。部活内だけの接点。だからいいやと思っていたのに…。
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