青春Play back
□青春Play back.
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少しずつ…
君の事を知りたい。
柄にもなく、そんな事を思ったんだ…。
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*第八話*
「ただ今」
六時半。居候帰宅。
随分遅いわね。
すっかり自分ん家みたいな感じに居座ってる景吾が面白くて、何だか笑えて来た。
夕飯の支度をしながら、景吾に話し掛ける。
「おかえり。すっかり自分ん家みたいになってるわね」
景吾が家に来てから、あまり時間は経っていない。けれど、すぐに慣れてしまう景吾を見て、伊達に女の家を渡り歩いてるな…と思った。
女慣れしている。まあ、こんだけ格好良ければ、自然と慣れちゃうんだろうな。
「だって俺ん家じゃねぇーか」
「あんたねぇ!どんなけ傍若無人なのよ!」
「こういう性格なんだよ」
「全く…」
さすがに性格は直せないから、呆れながら諦めるしかない。
こういう性格の野郎なんだと思い、接していくしかない。
そのうち、嫌でも慣れちゃうだろうけどね。
「腹減った…」
「はいはい。もうすぐ出来上がるわよ」
マイペースで自己チューで傍若無人。そんでもって我が儘と来たこいつを、つい昔の自分を重ねて見てしまう。 自分に重ねて見ちゃうと、景吾に言う事はなくなってしまう。
かつての私も、景吾と同じく男を従えていて、遊び放題だったから。
マイペースで自己チューで傍若無人。そして我が儘。昔の私そのもので、まるで自分を見ているかの様だ。
(なんか…変な感じ…)
周りの人達は、今の私と同じ事を思っていたのだろうなぁ。
悪い気はしないけど、決していい気分ではなかっただろうなぁ。
当時は、あまり女友達と関わってなかったから、きっと女からはウザがられてたんだろうなぁ。
懐かしい…。
そう思いながら、出来上がったばかりの味噌汁を一口味見する。
うん、調度いいや。ご飯出来上がり。
「出来た!」
おかずの唐揚げとご飯、味噌汁を盛りつけて完成。二人しかいないんだから、おかずはこんなもんでいいだろう。
素早くテーブルへ運び、お腹が空いているという景吾に差し出す。
料理は得意だから、かなりの自信がある。っていうか、家出人にまずいなんて言わせない。
「どうぞ」
余程お腹が空いていたのか、景吾はすぐにご飯を持ち食べ始めた。
食べているけど、味を確かめる様に少しずつ口に運ぶ。
「美味しい?」
「美味い」
それだけ言うと、再び食べ始めた。一安心した私も、一緒に食べ始める。
ご飯と味噌汁と唐揚げ。ここまでこの三つが似合わない奴なんているだろうか…。
おかしくなり、つい笑ってしまう。傍若無人だけど、どこか品があって優雅な景吾が、私のご飯を食べている事が、何だか擽ったい。
美味しいって言ってくれた事。
美味しそうに食べている事。
それらが、嬉しくて仕方ない。
これからも、こんな日が続いていくのかなぁ…と考えたら、不思議と気持ちが暖かくなってきた。 それと同時に、一緒にいる以上は、少しでも景吾の事を知りたいと思った。
誰かを知りたいなんて、初めて思った。だから、少し戸惑ったけど、私は聞きたくて口を開いた。
「そう言えば、景吾って何で帰ってくるん遅いの?」
「あぁ?部活してるからに決まってんだろ」
「部活!?景吾が!?」
意外…なんですけど…。
女と遊んでるイメージしかないよ…。っていうか、学校終わったら遊ぶ為に真っ先に帰りそう…。
イメージって怖いな…。
「アーン?んなに驚く事か?因みにテニス部で、部長は俺様だ」
「マジで…?」
しかも部長かよ…。
けど、テニスは上流階級の人がやってたスポーツだから、景吾には合っている。
部長って事は、かなり上手いんだろうな…。
「あ、そっか。だから土日とかも学校行ってたのか」
部活なら土日だってあるし、学校に行かなくちゃいけないよね。
景吾が部活してるなんて事気付きもしなかったから、出掛ける理由が部活だったなんて解んなかったよ。
「そういう事だ」
謎が一個解けた。
少し誇らしげに言う景吾から、テニスが大事という気持ちが伝わって来た。
好きじゃなかったら上手くもないし、部長になんてならないよね。
「部活かぁ…懐かしいなぁ」
「莉音は、部活やってたのか?」
「私は帰宅部よ。部活なんてかったりぃー事、したくなかったの」
「ふーん…」
なんか…あんま興味なさそうね。
けどまぁ、景吾の意外?な一面が知れて良かった。 一歩、近付いた感じがした。
今まで、中学時代に男に感じなかった感情が、景吾に向かって次々と溢れてくる。
なんで、景吾にだけしか溢れないんだろう…。