青春Play back

□青春Play back.
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住む家が出来た。



女が美人で良かった。



最初は…



そんな事しか思わなかった…。





青春play back
*第七話*






「あぁーかったりぃー」

そう言いながら、俺は屋上の手摺りに背中を預けた。
世界史のじじぃのくだらなくてつまんねぇ授業なんて聞いてられるか。
退屈に堪えられなくなり、仮病を使って教室を抜け出した。
偽造工作なんておてのもの。ここの保健医は、俺に夢中だからな。何を聞かれても、「ここに居ましたよ」と答えるに決まってる。

無意識にズボンのポケットに手を突っ込むが、お目当ての物がない事に気が付いた。

「昨日…」

居候先の女に、取り上げられたんだ。
こんな子供、好きにさせとけばいいのに…。住むだけ住まわせて、野放しにしとけばいいのに。けれど、あいつはそれをしなかった。
自ら、関わりを深くしてくる。けれど、しつこいとか邪魔なんて事は、不思議と感じない。

『追い出すわよ』

この一言に反応して、煙草を差し出してしまった自分が滑稽で笑えてくる。
なんで、あんな素直に渡してしまったんだろうか…。
なんで、あの時焦ってしまったんだろうか…。
住む家なんていくらでもある。俺が本気で引っ掛ければ、女の二人や三人はすぐにキープ出来る。なのに何故、あの家だけは追い出されたくない!なんて思ったのだろうか…。

「わかんねぇ…」

そう小さく呟いた直後、屋上の扉が開き、いつものメンバーが顔を出して来た。

「あっ!跡部じゃん」

「先約がおったんかいな」

顔を出したのは、忍足と向日。こいつらも、サボりの常連だ。そして、保健医のお気に入り。
この二人は、同じクラスだったりするのだが、二人同時に抜けて怪しまれないのだろうか…。まぁ、頭の悪い先公達にはわかんねぇか。

「よく怪しまれねぇな」

「自習やったんや」

「成る程な」

怪しまれねぇ訳だな。
自習なら、サボり放題じゃねぇか。羨ましい事だな。
三人共手摺りに沿って並び、下らない雑談を繰り広げる。まぁ、今日は下らない雑談なんかじゃないんだけどな。

「跡部、今日吸ってねぇーじゃん」

「あぁー…没収された」

「誰にや!?」

「家出先の女」

「まだ家出してんのかよ。よく飽きねえな」

「うるせぇな…」

俺が家出して、かれこれ一ヶ月が経過した。最初は街で吹っ掛けた氷帝大の女で、今はその隣に住んでいる女の家。
さすがに隣はヤバイだろうと思ったが、これが結構居心地が良かったりする。
あれから氷帝大の女も手を出して来ないし、見付かってはいないんだろうな。まあ、見付かったら見付かったで、何とかするからいい。莉音の家を出て行く気なんて、今の俺には全くない。

「跡部も大変やんなぁー…」

「てめぇもな」

忍足ん家は親が医者で、跡取りがどうのこうのとか言っていた気がする。こいつには姉貴。俺は一人っ子だから、必然的に跡取りになってしまう。
金があるし、継ぐのは構わない。けど、今から仕込まれる事に我慢ならないだけ。
親の敷いたレールを、文句も言わずに歩くなんて、俺の性分には会わねぇ。多分、こいつも同じなんだろうな。

「お前ん家程やないで」

何処ん家にも、事情ってもんがあるんだよな。
それは莉音家にも言える事で、まだ深く聞く関係なんかじゃない。


っていうか、んな事聞いて俺はどーすんだ?


「なぁ!跡部の家出先って女んところか!?」

「あぁ…」

「美人か!?まぁ、跡部なら美人な女の所にしかいかねぇよなぁ」

「面食いやからなぁ」

「俺様に釣り合う女じゃなきゃな」

格好いい男には、いい女じゃなきゃな。美人が、俺様の絶対条件。
目が覚めて、一番に目に入った莉音が綺麗で、ここがいいと思ったんだ。
俺様に合う。そう、直感的に感じた。そして、その直感が的中。
口煩いけど、一緒にいて全く苦じゃないし、寧ろ楽。氷帝大の女は彼女でもないのに彼女面して、束縛が凄かったから、うざくて仕方なかった。だから振りほどけて良かった。すっきりした。

「俺も、んな事言ってみてぇ…」

「そや、ガックンこの間告られた子はどないしたん?」

「三股がばれてフラれた…」

「馬鹿だなぁ」

こいつらとの、馬鹿な会話が結構面白かったりする。
今は、それと女がいればいい。
仕事なんて、大学入ってから仕込まれるんだって遅くない。
子供の青春を奪う権利なんて、例え親でもねぇはずだ。
中学高校くらいは、好きな事させろ。それが、俺の主張。


まぁ、これが青春って言うなら、すげぇー爛れた青春だけどな。
それでも俺は、満足している。



らしくねぇけど、莉音との今後の生活が…



楽しみで仕方ねぇんだ。



だから、誰にも邪魔はされたくねえ―…。






移行完了【2015/10/13】
 

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