青春Play back
□青春Play back.
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ころころ変わる君の心。
不機嫌。
我が儘。
時々優しさ…。
青春play back
*第四話*
小鳥のさえずりと強い日差しを受けて、私は目を覚ました。
「ん…」
昨日、仕事をしながら寝てしまったらしく、パソコンを枕に寝ていた。
しかし、パソコンでの作業は終了されていた。
「書類…終わったんだっけ…?」
寝ぼけ眼でしていたから、よく思い出せない。
終わったような終わってないような…。
でも、記憶にないとは言えパソコンが起動していないということは、ちゃんと終わったんだろう。そう思うことにしよう。
昨日は散々だったからなぁー…。
見知らぬ男の子が家に来て、傍若無人に振る舞い……っ!?
「あっ!」
昨日の出来事を思い出したら、景吾が寝ているということも思い出した。
勢いよく振り返った。すると、肩から何かが落ちた。
「これ…」
拾い上げると、それは景吾に掛けたはずの肌かけだった。
私に掛かっていることは、景吾がかけてくれたに違いない。
他に掛けてくれる人なんて居ない。
傍若無人な態度からしたら想像できない。しかし、掛けてくれるとしたら、景吾しかいない。
「優しいところあるんじゃん」
我が儘な奴だけど、優しい所もあるんじゃん。
ちょっと見直した。
意外な一面を見た気がして、私の顔は、思わず弛んでしまう。
私に掛かっているということは、景吾は起きている。
だけど、部屋の中に人の気配はない。寧ろ、家の中には自分の気配しかない。
ここにはいないと解ると、私はため息を零した。
「帰ったのかな…?昨日あんだけ騒いどいて…」
昨日は拗ねて寝ていたというのに、一晩起きたらその怒りも静まったのか?
だけど、ここにいると居候発言を堂々とした景吾が、一晩で帰ったりはしない気がした。
新しいおもちゃを見つけた感じによく似ている。
たまたま助けた家が気に入ってしばらく居座ろう。そう思ったんなら、しばらくは家にいるだろう。それに、自分の言ったことは意地でも貫き通しそうな性格だ。まだ、帰ったりはしないだろう。
私は椅子から立ち上がり、景吾が寝ていたソファーへと近づいた。
そして、紙切れのメモを見つけた。そのメモには、綺麗な字でたった一言だけの言伝が書かれていた。
「学校に行ってくる…。今日平日だっけ…?」
曜日の感覚がなくなっていた私は、壁に掛かっていたカレンダーに視線を向けた。
「今日…あれ…?土曜日じゃん」
(学校休みなのに学校?)
土日の休日は確か氷帝大休みなはず。
それなのに、景吾が学校へ行ったのが不思議で仕方なかった。
ま、後になって私の勘違いだって解るんだけどね。
「ま、いいか」
気を取り直し、私は折角の休みを満喫しようとベッドへと向かった。
掛けられていた毛布にくるまり、疲れを癒やす睡眠へと落ちていく。
微かに残る景吾の香が、何だか心地よくて、すんなりと眠りに入ることが出来た。
怒ったり…
拗ねたり…
偉そうだったり…。
景吾が、他にどんな顔を持っているのか、凄く気になった。
そしてその表情を、しばらくは、近くでみていたいと思った。
これも…
きっと何かの運命だと思うから―…
続
移行完了【2015/10/13】