青春Play back
□青春Play back.
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ちゃんと恋愛しとけば良かったと、今更ながらに後悔した。
気付けばもう二十歳前半の年。
この年で、本気で人を好きになった事がないなんておかし過ぎるだろう。
本気の恋を知らないなんて…。
青春 play back
*第一話*
熟れた恋ばかりをしていた。
本気で好きになった男なんて一人もいない。
自分の色香を鼻に掛けて、いろんな男と遊んでいた。
顔だけはいいから、引っ掛かる男なんていっぱいいた。
色仕掛けで迫って、男を落として遊んでいた。
みんな遊びで付き合っていた。落としに掛れば百戦錬磨。
あ、カップル壊してくれ…っていう依頼もあったな…。
勿論金は取る。ちょっとした小遣い稼ぎみたいな感覚だ。
私が迫れば確実に落ちる。
でも本気にはならない。皆遊び。
本気で好きになった男なんていない。
でもそんな青春時代を…
こんなに後悔するなんて…。
もっと恋愛楽しんでおけば良かったよ…。
下らない事してないでさぁ…。
今は仕事が忙しくて恋愛なんてしてる暇がない。出会いだってない。
自分の部屋へと続くマンションの階段を、ヨボヨボになりながら登っていく。
「……疲れた…」
足が棒状態。
腰痛いし首痛いし足痛いし…。
なんでこんな必死になってんだろう…と馬鹿らしく思えてくる。
昔を思い出すと、今こうして働いているのが不思議なくらいだ。
昔はお金に苦労しなかったからなぁー…。
食事に行けば男の奢りだし。自分のお金を使う事がなかったんだから、お金なんて持っていなかったに等しい。
「……昔に戻りたい」
戻りたい…。
きっと働かなくても暮らせて行けたんだろうなぁー…。
おぼつかない足で階段を登って行き、登りきってから一息つく。
疲れた…。めちゃくちゃ疲れた…。
一息ついてから、そう呟いた。
「ん?」
そして、部屋へと続く通路に視線を向けた。すると、自分の部屋の前に大きな影が見えた。
瞳を凝らして、よく見てみる。
「疲れすぎて幻覚まで見ちゃった?」
その影はどう見ても人影の様な気がしてならない。
寝転がっている様にしか見えないそれは、ぴくりとも動かない。
「酔っぱらい!?勘弁してよぉー」
疲れて来てさぁー、家の前には酔っぱらいぃ?
本当に勘弁してください。
ムクリと起きて上がって、立ち去って下さい。
ついてないとしか言いようがないよ…これ。
私は酔っぱらいの様子を覗き込もうと、身を乗り出した。
「………マジ?」
酔っぱらいじゃない。
オヤジじゃない。
悔しい位に顔の整った青年が、倒れていた。
「めっちゃ格好いいじゃん…」
整った顔に、色素の薄い肌。
サラサラの髪の毛に、筋肉質な腕。細いくせに…。って筋肉なんだから細いか…。
なんでこんな綺麗な青年がここに?しかも私の部屋の真ん前。
これは……
私への贈りものですかぁー?
運命?運命の出会い?
運命の出会いと言う事で。
* * *
青年を部屋に運び、ベッドへと寝かせる。
顔には切傷みたいな小さな傷が出来ていた。綺麗な顔に傷をつけるなんて言語道断。
改めて、明かりの下で見る青年の顔は綺麗で格好良いい。
傷が少し気になるが…。まぁ、此処は致し方ない。
パソコン用の椅子に座り、青年の様子を伺う。眼鏡を掛けて、パソコンに向かった次の瞬間。
「ん……あぁ?」
「気が付いた?」
青年が目を覚ました。
私が声を掛けると、はっきりした返事が帰ってきた。
「ここ……どこだ?」
見知らぬ部屋にいたら誰だってそう言うだろう。
辺りを見渡している。
ゆっくり起き上がり、上半身を起こす。未だに辺りをキョロキョロしている。
「君が通路で倒れてたから。しかも私の部屋の真ん前で」
「悪かったな」
「別にいいんだけど。あ、顔に傷あるわよ。消毒しといたけど」
「俺様の美しい顔に…」