青春Play back

□青春Play back.
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当たり前のようにそこにいて。



当たり前のように我儘言って。



いつのまにか、当たり前の光景になっていたんだ…。





青春Playback
*第十三話*






「ただいまぁー」

玄関が開いていたから、景吾が帰ってきてるんだろうと、声を掛けながら靴を脱ぐ。
すると、案の定帰ってきていた景吾に、かったるそうに返事を返され、尚且つ文句まで言われる。

「おかえり。おせぇーぞ」

「あんたねぇ…」

人ん家なのに、よくここまで傍若無人な態度が取れるわね…。
まぁ、それが景吾だから仕方ない。遅いと言っても、まだ夜の七時。遅い時はもっと遅いわ。
文句の一つも言ってやろうかと思ったが、景吾に何を言っても、唯我独尊な答えしか返って来ないから、敢えて何も言わない。余計疲れるだけだから。
鞄をソファーに置き、景吾に視線を向けずに、台所まで真っ直ぐ向かう。買い物をしてきたから、手には荷物が二個あり、台所の台に置いておく。
呆れている私に、景吾は全く構う事なく、自分を最優先させる。

「腹減った。飯食わせろ」

「今帰って来たばかりだっつーの!!そんなすぐにご飯作れる訳無いでしょ!」

「飯…」

拗ねたように、小さい声で再び繰り返す。
いくら外見が大人びていても、中身までは伴わない。中身は、十代の子供そのもの。
自分の欲望を最優先させる。人の都合なんて、欠けらも聞いていない。

唯我独尊。
傍若無人。

ここまで、この二つの四字熟語が似合う人になんて、出会った事ないよ…。いや、これからも絶対に出会わないと思う。
景吾以上に凄い人なんて、いる訳無い。居たら溜まったもんじゃない。

ソファーで、当たり前のように寛いで、不機嫌な表情の景吾の目の前に、夕飯を置いた。

「はい、ご飯」

「はぁぁ!?夕飯これかよ!弁当じゃねぇーか!!」

プラスチックの容器に入った、温めてもらったばかりの弁当を置いた事に、景吾はかなり立腹している。
今まで、ちゃんと作ってあげていたから納得できないんだろうな。
今から作るなんてイヤ。仕事で疲れているし、何よりも、弁当が私を呼んでいた。
たまには出来合いのものでもいいかな?と思い、つい買ってきてしまったのだ。
文句を言い、手を付けようとしない。

どこまで我儘なんだ…こいつは。
坊っちゃん育ちなんだか知らないけど、こんな奴の我儘に付き合っている程、私は心広くない。

「あっそ、食べたくないなら食べなくていいよ。ご飯これしかないし。文句があるなら、そこら辺の女に慢らせてくれば?」

「あ、おい!」

景吾の前に置いた弁当を取り上げて、キッチンへ運ぼうとする。
ここはただの居候先。私は、住居を提供しているだけ。
律儀に、ちゃんと毎日帰ってくる景吾が理解できない。
私なら絶対、居候していても男引っ掛けて、夜中まで帰らない。

遊んでいようと、女引っ掛けていようと、私は全然構わない。
景吾に干渉するつもりはないし、監視するつもりも、縛るつもりも全く無い。
景吾の好きにすればいい。他人の自由を、束縛する権利なんて私にはないから。

それなのに、景吾はちゃんと帰ってくる。
こうして、我儘を言いに、ちゃんと帰ってくる…。

我儘を言いに来ているんだか、ただ甘えたいだけなのか、よく解らない。
まぁ、たぶん全部なんだろうな。

景吾の弁当をキッチンへ置こうとした途端、景吾が口を開いた。

「食べるから寄越せ」

どこまでも偉そうな景吾に、私は思わずため息を吐く。
景吾の我儘に付き合っている程、私は暇じゃない。

だけど、もうすっかり景吾に生活乱されてるんだ。
諦めるしかない。こいつがここにいる限り、今までの生活には戻れない。

女を引っ掛けてくる事より、景吾はここで弁当を食べる事を選んだ。面倒臭いだけなのか、余程ここが気に入ったのか…。

まぁ、多分景吾なら前者なんだろうけどね。

食べると言った景吾に、再び弁当を渡す。そして私も、ソファーに座ってお弁当を食べ始める。
意外に美味しかったのか、余程お腹が空いていたのか、景吾は弁当を完食。

…にしても、ここまでスーパーのお弁当が似合わない人、初めて見たよ…。
かなり我儘だけど、やる事為す事に、どこか品がある。優雅というよりは横暴な部類だけど、庶民の雰囲気は全くしない。

(景吾って、何なんだろう…)

今まで、ただの毛並みのいい野良猫だとしか思っていなかった。
改めて景吾を見ると、毛並みがいいだけの野良猫じゃない。氷帝に通ってる事自体が上流階級の証なのに、その上景吾は、男テニ部長だとか言ってた…気がした…。多分気の所為じゃない。

今思うと、私、景吾の事何にも知らないなぁ…。
興味が無いとは言え、知らなさすぎだよね…。ってか、年下とは言え、異性意識してなさすぎ…?
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