企画集(てにす)

□聖なる夜のLove story
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夕方の四時頃、桜子の携帯が音を奏でた。
携帯を見て驚きの色を隠し切れないでいる桜子。
携帯には表示されているのは、メールの画面になっており、一件の受信メールが開かれていた。その内容に嬉しさと驚きを隠せない。男性二人からの呼び出しのメール。

(私ってモテモテ?)

一瞬そんな考えが頭に浮かんだが、急いで思考を切り替えた。
今はそんな事考えている場合ではない。何かの間違いだろう…と考え直し、もう一度携帯に目線を落とすが、やっぱり間違いなどではなかった。肝心のメールの内容は、簡潔な内容のものだった。


subject:桜子へ

話があるから近くの公園
まで来てくんねぇか?

From跡部(+忍足)


何で忍足が+になっているのかが気になったが、深く考えている暇など無かった。
呼び出した人は、氷帝学園で一、ニを争う程人気の跡部景吾と忍足侑士だった。
メールを送信したのは跡部だが、+忍足となっているのだから、忍足も桜子に用事があるのだ。
呼び出されたからには行かなくてはいけないと思い、桜子は携帯を机の上に置き支度を整えた。そして、二人が待つ公園へと急いで向った。
公園の近くまで行くと、何が原因かは解らないが二人が言い争いをしているのが聞こえて来た。

「細けぇ事気にしてんじゃねぇっ!!」

「どこが細かくないんや!!」

呆れながら公園に入り、口喧嘩中の二人を見て溜め息を吐いた。
跡部より先に桜子に気付いた忍足が、喧嘩を強制終了させて桜子に近付いた。その行動にドキッとしてしまった桜子。
先を越された跡部は、忍足を睨みながら桜子に歩み寄っていた。

「来てくれてありがとさん」

何故か上機嫌の忍足。
何の為に呼び出されたのかよく解らない桜子にとっては理解出来なかった。とりあえず、二人の話を聞かなくては始まらない。

(何やってんだろ…)

「で…私に話したい事って何?」

桜子の問い掛けに、待ってましたとばかりに、勝ち誇ったような笑みを浮かべながら忍足を押し退け、桜子に、呼び出した用件を告げる。

「お前、クリスマス俺と過ごさねぇか?」

「……はい?」

いまいちよく理解できなく、首を傾げて見せた。
何で私が跡部とクリスマスを?と言うのが頭の中をぐるぐる回っていた。すると忍足が、そんな桜子を見兼ねて、単刀直入に言って来た。

「俺も跡部も桜子が好きなんよ」

忍足の言葉に耳を疑い、固まってしまった¥。
跡部はともかく忍足までもが自分の事を好きだと言った。
今はっきりそう言った。正直信じられない事だった。
跡部が自分の事を好きと言う事より、忍足が自分の事を好きと言う事の方が信じられなかった。その理由は簡単である。
桜子も忍足が好きだから…。
だから余計に嬉しいし、その反面信じられなかった。…と言う事は両想いと言う事になる。しかし、桜子の頭はいまだ混乱状態。
今返事をする事は出来るが、突然の事でそこまで頭が働かない。
そんな桜子が戸惑っていると見えたのか、跡部と忍足がある提案を出した。

「もし、俺と過ごす気があるんだったら、クリスマスの日この公園に来い。待ってるぜ」

「んでもし、俺と過ごす気ぃあるんやったら広場にあるツリーの前に来たってや」

ある提案とは、どちらに行くか?と言うようなものだった。
二人が場所を指定して、桜子がどちらに行くか…。桜子が来なかった方は潔く桜子を諦める。二人はそれぞれ、跡部は今居る公園で、忍足は駅前の広場にあるクリスマスツリーの前で待っていると言う結論になった。

「うん、解った…」

頷きながらの返事。
けれど桜子の行く場所はもう決まっていた。
その場では、そういう事に決定し、解散となった。
二人とも、自分の所に桜子が来ると思いながらその場を去って行った。


* * *


そしてクリスマス当日。
桜子はもうすでに身支度を整え、家を出る準備万端だった。
桜子が向おうとしているのは忍足の居るクリスマスツリーの前。決してツリーが見たいと言う、不純な動機ではない。
本当に忍足が好きだったから。ずっと好きで、ずっと思いを伝えられなかった忍足からの告白。好きな人と夢の様なクリスマスが過ごせるのだ。嬉しくない訳が無かった。寧ろ嬉しすぎて笑顔が止まらない桜子。
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