企画集(てにす)

□White Merry Xmas
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一年に一度のクリスマス。
やっぱり好きな人と過ごしたいと思うのが女の子の常識。けれど彼氏がいなければ、クリスマスを過ごす相手が居ないのも同然。けれど桜子の場合、好きな人はいる。しかし告白できないまま。
桜子の好きな人は、同じクラスの忍足侑士。
顔良し、頭良し、性格良しの素敵な人。
クラスメイトだからか侑士とは良く話す仲。けれど後一歩が踏み出せないまま、クリスマス二日前になってしまった。教室で溜め息を連発する桜子。

(はぁー、クリスマス一人かぁ…でもクリスマスは侑士と過ごしたい。その為には告白しなきゃ…でも告白したからって百%侑士と過ごせる訳ないし…断られたら嫌だし…どうしよう…)

朝から何回この事を考えている事か。
クリスマスは好きな人と、つまり侑士と過ごしたい、けど告白する勇気なんて全く全然これっぽちも無かった。
侑士はかなりのモテモテ。だからきっともう過ごす人決まってるんだろうなぁ…と考えてしまう。
はぁー・・と今日何回目か解らない溜め息をつき終った瞬間、誰かに肩を叩かれた。
誰だろうと思い、軽い気持ちで振り返ったら、自分の瞳に映った人に驚きの声を上げてしまった。

「わっ!!びっくりしたぁ…侑士か…」

まさに桜子の瞳に映ったのは紛れも無く、今さっき桜子が考えていた人物。
桜子の驚きの声を意外に思ったのか、それとも呆れたのか、どちらとも取れるような感じで口を開いた。

「そんなびっくりする事ないやん…桜子が朝から元気無い思うて心配しとったのに…」

「あっ?えっ?そっ、そう!?気の所為じゃない!?」

明らかに動揺したような態度。それを見て余計に心配になってきた侑士。心の中だけで呟いた。

(絶対嘘やん…)

侑士が桜子を心配するのは、侑士も桜子の事を好きだからに他ならない。
そして桜子に告白しないのは、振られるのが嫌なのか、それともただ単にまだしないだけなのか…知っているのは侑士自身だけである。

「御心配お掛けしました」

わざとらしく敬語で言葉を返すと、侑士はますます呆れ顔になってしまった。

「ホンマや…お前が静やと落ち着けへんわ…」

ここまで侑士が好きだという気持ちを出してるのに、どうして桜子は気付かないのだろうか…。
そして侑士も桜子の気持ちに全く気付いていない。そんな二人にクリスマスが刻々迫ってきていた。


* * *


そしてとうとうクリスマス当日になってしまった。
結局、桜子は侑士に告白出来ずにクリスマスを迎えてしまった。
親と過ごすクリスマスより淋しいものはきっとこの世には無いだろう。
桜子はそう思いながら部屋で雑誌を開いていた。
その時、机に上に置いてあった携帯が曲を奏でた。
この着信音は電話の着メロだと思い、携帯を見ると≪忍足侑士≫の文字がはっきりと表示されていた。
少し胸を高鳴らせながら電話に出ると、いつもと同じ侑士の調子のいい声が聞こえて来た。

「もしもし…」

『桜子かぁ?ちょぉ今外出れるか?』

「えっ、今?」

『そっ!今や、今やないとアカンねん』

「何で?」

『ええからええから』

「ちょっと待ってて」

桜子は予想外の呼び出しに、浮かれながら電話を切った。
まさかクリスマスに侑士と逢えるとは思ってもいなかった。予想も付かない事だろう。
突然の侑士からの誘いに顔の筋肉が緩みっぱなし。
桜子は早く行かないとと、椅子に掛けてあるコートに手を伸ばし、羽織ると部屋を飛び出した。
本来ら手袋やマフラーをした方がいいのだが、今の桜子の頭ではそこまで回らなかなった。急いで家を後にした。

「侑士?」

辺りをキョロキョロ探していたら、何処からか侑士の声が聞こえて来た。

「桜子、こっちやで」

声のした方に目線をやると満面の笑みで自分に手を振っている。
あまりの嬉しさに桜子も笑顔で侑士の元へと走って行く。

「どうかしたの?」

「今日クリスマスやろ。そやからや」

##NME1##を侑士の言葉がいまいちよく理解できなく、頭の上に疑問符を浮かべながら聞き返してしまったA。

「えっ?クリスマスだからって…何で私…」

桜子の頭は突然の事に追いつけずにいた。
ここまで侑士が言っているのに、解らないのは桜子が鈍感だからと言うだけでは無い。
確かに桜子は鈍感だ。それは侑士にも言える。しかし今の桜子は鈍感と困惑があった。困惑と言っても嬉しすぎて、信じられないといったような困惑だった。
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