企画集(てにす)
□Sweet happy Xmas
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クリスマスの二日前、彼氏の侑士と些細な事で喧嘩をしてしまった。
二日後にはクリスマスが控えていると言うのに…。
今更後悔しても、してしまった喧嘩を無くす事は時間が戻らない限り出来ない。
どちらかが謝れば済む事なのだが、二人とも妙な所で意地っ張りな為、誤謝る気配が全く見られなかった。
同じクラスではないから、その気になれば顔を一回も見ない事だって容易に出来る。
友人に、「あんた彼氏と喧嘩でもしたの?」聞かれる事も度々あった。その度に一言しかも冷たく、「別に…」と言葉を返していた。
二人が喧嘩した理由は、些細な事だった。
クリスマスプレゼントをお互いにバレ無い様に一緒に買いに行こうと約束したのに、侑士はその約束を蹴ったのだ。
理由を聞いても答えてくれない。その態度に桜子が怒ってしまい、結果侑士も怒らせてしまった。
未だに侑士が約束を蹴った理由は解らない。
『侑士の馬鹿…』
いつも携帯を見てはそう思ってしまう。
もしかしたら誤りのメールが来ているかもしれない、と思うがその期待は空回り。
何度も誤ろうと思ったが、自分は悪くない!!と言う気持ちが邪魔して誤れない。
そして仲直り出来ないままクリスマス当日になってしまった。
* * *
「まさか一人で見る事になるとはなぁ」
桜子は一人、イルミネーションの綺麗な巨大ツリーを見上げていた。
喧嘩をする前に、「ツリー一緒に見に行こうやvv」と約束していたクリスマスツリー。喧嘩をしてまだ仲直りしていないのだから、侑士がここに来るはず無かった。
本当は心の底からクリスマスツリーを見るのを楽しみにしていたのに…。
周りはカップルばかり。それを見て段々悲しくなってきた桜子。
本来なら隣には侑士がいるはずなのに…。
本当は侑士と見るはずだったのに…。
そう思うと悲しくて仕方なかった。
周りはクリスマス一色だと言うのに、桜子の気分は沈んだまま。
「素直に謝っておけばよかったなぁ…」
こういう時ばかりは自分の性格に呆れてしまう。
クリスマスを彼氏がいるのに一人で過ごす事は悲しすぎる事だ。
桜子が深い溜め息を吐いた時、不意に二人の男が話し掛けてきた。
「ねぇねぇ君一人?」
確かに一人は一人だが彼氏はいる。
明らかに二人の男は桜子をナンパして来たのだ。それを咄嗟に理解した桜子は男を無視して立ち上がり去ろうとした。しかししつこく付いてくる。
「一人なら遊ぼうよ。こんな日に一人なんて淋しいじゃん」
桜子は心の中で『ほっとけ!だいたいナンパしてくんだから自分が淋しいだけでしょ!!』と呟いた。
今話し掛けてしまったら何をされるか解ったもんじゃない。
無視してるのにしつこく話し掛けて来る。あまりにしつこさに思わず振り返って怒鳴ってしまった。
「しつこいなぁ!!あんた達と遊ぶほど暇じゃないわよ!!」
「でも一人なんだからいいじゃん」
「良くないわよ!!」
あくまで強気の態度を崩さない桜子。
中々誘いに乗ってくれないからか、桜子の腕を引っ張ってきた。
「離してっ!!」
振り払おうとするが男と女じゃ力が違いすぎる。
桜子が払おうと力を入れると向こうも力を入れて離そうとしない。しかも桜子は一人に対して相手は二人。
その時桜子は初めて恐さを感じた。侑士が居れば…そればかり思ってしまう。
「ねぇいいじゃん」
「俺達と遊ぼうよ」
「嫌!!離して!!」
いくら否定しても腕を引っ張られる。
無理矢理どこかに行こうとしているのが解った。だから余計に恐くなってきた。
(恐いっ…侑士…)
喧嘩中とは言えやっぱり助けを求めてしまう。
頼りにするのは大切な彼氏の侑士だけである。
しかし侑士がここにいる筈がない。自分が怒らせてしまったのだから、助けに来るわけが無い。そう思っていた。けれど桜子の耳にははっきりと聞こえた。
「お前等…人の彼女に何しとんねん…」
桜子の耳に届いたのは、紛れも無い侑士の声だった。
桜子が侑士の声を聞き間違うはずがない。
声のした方を見ると、確かに侑士がいた。しかも桜子の腕を掴んでいる男を睨みつけていた。
「侑士…」
何で侑士がここにいるのか…。
いるはずが無いと思っていた侑士が…。