企画集(てにす)

□Happy Merry Christmas
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「岳人ぉー!岳人!岳人!岳人ぉー!!」

勢い良く廊下を走り、真っすぐ先にいる岳人の名前を連発する。
目指すは岳人。
廊下で話をしている岳人は、私の声に気付いて、後ろを振り返った。
それを狙って、私は思い切り岳人に抱きついた。

「がぁくとぉー!!」

「どわっ!おい桜子ッ!いきなり思いっきり抱きつくな!」

「いいじゃん!」

私が岳人に抱きつく事なんていつもの事。
丁度抱くつきやすいから、つい抱きついてしまう。
私は岳人より少しだけ背が小さい。だから、岳人の胸に思い切り飛び込める。
岳人が大好きだから、抱きついてしまう。悪い事ではない。好き故の衝動。
私に抱きつかれた岳人は、慌てながらも、引き離そうとは決してしない。
でもその代わり、私は怒られる。恥ずかしいなら、そう言えばいいのに…。
だから私は絶対離れない。岳人が恥ずかしいと思っていると解っているから離れない。ちょっとした意地悪だ。

「はぁ…ったく…」

「ねぇ!それよりさッ!今日何の日だぁ?」

「えっ、今日…クリスマスだろ?」

何聞いてんだ?と言うふうな表情を浮かべ、岳人は答えてくれた。
そう!今日は年に一度の最大イベントの、クリスマス。

「あったりぃー!でね、岳人にプレゼント」

「プレゼント?」

「ちょっと待ってて」

そう言い残すと、私は急いで教室へ戻り、両手に紙袋を抱え、急いで岳人の元に戻った。
岳人の為に作った。
この日に、岳人にこれをあげる為に。
白い紙袋に、赤いリボンを端っこに付いている可愛らしい紙袋を岳人に笑顔で差し出す。

「はい!これ。今日岳人部活とか何とか言ってたから…今のうちに渡しちゃうね」

「なんだこれ?」

「いいから開けてみぃー」

岳人は、不思議そうな表情をしながら、袋を開け中身を覗き込んだ。
そして中身が解ると、一気に表情を明るくした。
私はその光景をにこにこしながら見てる。
中身が分かり、表情を明るくしたまま、岳人は中身を取り出して、掲げた。

「わぁー!マフラーじゃん!手袋も!」

「この前岳人マフラーと手袋欲しいって言ってたから、頑張って編んだんだからねぇー」

私は少し怒ったような真剣な表情をして、自分の頑張りっぷりを表してみた。
岳人が欲しいって言ってたし、マフラーと手袋なら私にだって編めるから、手作りの二点セットをプレゼント。
やっぱ欲しいものを届けたい。そう思ってしまう。
一緒に過ごせないのは悲しいけど、プレゼント渡せたからいいかな?
でも一緒に過ごしたい。これは我儘だから、口には出さない。

「さっすが桜子!」

岳人に思い切り抱き締められて、思わず驚いてしまったが、後から嬉しさがこみあげてきた。
岳人はマフラーを持ったまま、嬉しさに満ちていた。
こんな喜んでくれるなんて思っていなかった。だから、余計に嬉しい。
私を抱き締めてくれる岳人の背中に回した。

「なぁ今日一緒に帰らねぇ?」

「えっ…でも岳人部活は…?」

「こんな日に行くなんて馬鹿馬鹿しいじゃん。帰りはこの手袋とマフラーして帰るからな」

本当に…?
一緒に過ごせるの?
一緒に居られるの?


どうしよう…。


凄い嬉しい。


一緒に過ごせるなんて思ってなかった。
我儘言ってはいけないって思ってたから。
岳人は私の気持ちを解ってくれた。
好きな人と一緒にいたい、と言う私の気持ちを解ってくれていた。
そう思うと嬉しさは二倍。

「がぁくとぉー!大好き!!」

「今日は桜子と居たいしな…」

「岳人と過ごしたいよ。クリスマスだもん。好きな人と一緒にいたいもん」

「俺も!好きな人と一緒に居たいからな!」

抱きつく私の背中に手を回して、抱き締め返してくれた。
嬉しすぎる。
今の私達にはまわりの空気なんか関係ない。
ただ、二人だけの時間をゆっくりと、味わうだけ。
今日一日は、好きな人と最高に素晴らしい日になりそうです。
なんたって、今日はクリスマスなのだから…。

この後も、岳人と一緒なら、楽しいに決まってる!


Merry
Christmas




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