企画集(てにす)

□Happy Merry Christmas
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「何で一緒に過ごせないのよ!?」

『だから部活だって言ってるだろ!』

「クリスマスに部活する学校がどこにあんのよ!」

『俺等が通ってる学校がそうだよ!!』

電話での言い争いなんてしょっちゅうある事。好きで言い争いしている訳じゃない。
夜になって、亮から来た電話。ウキウキしながら取った電話の内容は最悪なものだった。

『クリスマスは一緒に過ごせない…かもしれない』

理由は部活があるからで…。
最初は冗談かと思ったけど、亮はこんな事、冗談じゃ言わない。
折角、亮と過ごせると思っていたクリスマス…。
大切な日は、好きな人と過ごしたい。そう思っているのは私だけなのだろうか…。
部活なら仕方ない。そう思いたいけど、思えない。何回、部活で約束を蹴られた事か…。
テニスバカな亮なら、部活を優先する。なんて分かり切ってると思っていた。けど、実際は解っていなかった。亮が、部活を優先する事に腹を立てているのだから…。

「…いい」

『桜子…?』

「もういい!!」

『ちょっ…ッ!桜子ッ!』

プー‥プー‥

私は思わず、捨て台詞を言い電話を切ってしまった。
電話の向こうで明らかに焦っていた亮を無視して…。
一緒に過ごせると思って、楽しみにしていたのに…。
なのに一緒に過ごせないなんてあんまりだ。
一日、一緒にいよう。って約束したのに…。
離れないでって言ったのに…。
部活だから仕方ない。
今は部活とかそんなの関係ない。
私が一緒に過ごしたい相手は、たった一人しかいないのに…。
私はクッションを抱えて、顔を埋めた。

「亮のバカ‥ッ…バカバカバカ…バカ‥」

瞳にはうっすら涙か溜まっていた。
微かに滲んでいる視界。
一緒に過ごしたい。
亮と一緒にいたい。
怒りながら電話を切ってしまった事を、少しだけ後悔した。でも私が怒るのは当たり前だ。
一年の中で、もっとも華やかで、ロマンチックな行事を、亮は蹴ったのだ。彼女なら怒って当然。

「亮のバカ‥アホ‥もう…知らないんだから…」

怒りに任せて、心にも無い事を口にした。
私は、クッションを抱えたまま、ベッドに横になり、段々と、意識を手放していった…。


*  *  *


次の日になっても、私の怒りは納まらない。
いつもなら亮と一緒に登校なのだが、今日は亮を無視して、教室にやってきた。
教室に入ろうとした時に、謝罪しに来たのか解らないが、亮が苦笑しながら私に近づいてきていた。

「よっ…よぉ桜子…お早よう」

「……ふんッ」

挨拶してきたからあからさまに、視線を外し、完全無視。
さすがにこれは堪えるのか、頭を掻きながら、本気で困った様な表情を浮かべた。

全て亮が悪い。
でも全てじゃない。
でも亮が悪い。

私が不機嫌オーラを放っていると、友人が心配して話し掛けてくれた。

「桜子…そんなに怒んなくても…でも、クリスマスまで部活やる事もないよね」

「撫子もそう思う!?全く…監督は過ごす人いないからいいけどさぁー…」

「そうなんよぉー。俺かてなぁクリスマスの日に部活はきついねん」

「そうなんだぁー………」

どこかで聞いた事のある声に、独特の関西弁。
いきなり撫子じゃない声が聞こえたにも関わらず、私は普通に返事を返していた。けど、返事を返した後に、ふと疑問に思い直した。
私が横を向くと、腕を組んで、深々と何回も頷いている見た事ある人物がいた。誰だかなんて見ればすぐに解る。

「忍足君!?」

「おっはようさん、朝から不機嫌やね。宍戸の彼女さんは」

「不機嫌にもなるよぉ!だってクリスマスに部活で会えないなんてどうかしてる!!それに私を選ばない亮も亮だよッ!」

私は亮と同じ部活と言う経緯と同じクラスと言う事で、仲良くなった忍足君に話を聞いて貰っていた。話と言うか愚痴かも知れない。
机を叩き、悔しさを表す。すると、忍足君は、あれ?と言った感じの表情を浮かべながら、ゆっくりと口を開く。

「宍戸の奴…クリスマスの部活取り消してくれぃって監督に頼み込んでたで?彼女さん…知らへんの?」

「えっ…嘘…」

「ホンマやで。大切にされとるんやな」

嘘だ。
初耳だ。
そんな事、亮が言っていたなんて…。
亮は電話でも何も言っていなかった。恥ずかしかったの…?

亮ならありえる。

でも聞いていない。
何で言ってくれなかったの…?
恥ずかしかったから…?

(亮のバカ…じゃぁなんで部活選んだのよ…)

それならそうとはっきり言って欲しかった。
亮がテニスバカなのは解ってる。ちゃんと理解だってしてる。
余程の事がない限り、部活を休まない事も…。
その亮が、監督に部活取り消しを言っていたなんて…。
それって…
私と過ごしたいから…って思って、いいんだよね…?
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