企画集(てにす)

□LOVE season-結-
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「なぁ桜子ー、クリスマス一緒に過ごさへぇーん?デートしようや」

「無理」

「即答!?ひど…」

クラス中の視線が痛い。
だから、誘いを断った訳じゃない。





LOVE season-結-





「だぁーかぁーらぁッ!!その日はバイトなの!!」

「クリスマスにバイトなんてどこまで淋しい奴なん!?」

「うるさぁーい!!」

痛い所を突きやがって…。
朝、クラスに来るや否や、私の男友達の侑士は、デートしようと言い放った。
お陰でクラス中の女子の視線集めちゃったわよ…。
だけど生憎、クリスマスの日はバイト。
だから、侑士の誘いを断るほか無い。
忍足侑士の誘い断るなんて私だけだよなぁー…と、妙な優越感に浸ってみる。だけど段々悲しくなって来た。
断りたくて断ってるんじゃないのに…。女子からの視線がさらに痛くなった。

「大体…あんたなら他に過ごす相手幾らでもいるでしょー?」

「居るんは居るんやけど…」

「だったらいいじゃない。私は無理だから」

「解った…」

侑士の淋しそうな表情を見て、心に痛みが走った。
私だって侑士と過ごしたい。
だけど、バイト入ってくれって頼まれちゃったし…。今更行けませんなんて言えない…。
侑士には悪いけど…。心の中で何度も謝りながら、私は侑士の背中を見つめた。


*  *  *


「お疲れ様でぇーす」

「今日はありがとね。助かったわ」

「いえいえ」

店長さんに御礼を言われ、私は照れながら言葉を返した。
人手が足りないと言われて、私は自らバイトを申し出た。
ちょうど昨日から冬休みだし、過ごす相手なんていないだろうと思ったから。
だから私はバイトを申し出たんだ。そのお陰で侑士と過ごせなかったのは淋しいけど…。
気まぐれだろう、侑士が私と一緒に過ごしたいって言ったのは…。
それでも、私は嬉しかった。あの時、私が「うん」って言っていたら、本当にクリスマス一緒に過ごせたのだろうか…。
今更、そんな思いが芽生えて来た。だけど、パートさんの言葉で、その思考は中断された。

「ねぇちょっと!ちょっと!外に格好いい男の子いるわよぉーッ!!」

「えっ…?」

格好いい男の子なんて私が知る限りではあいつ位しかいない。
でもまさか…。
興奮気味のパートさんの言葉に驚いて、私はドキッとした。
まさか…と疑う思考が邪魔をする。だけど確かめなくちゃいけない。

「お、お疲れ様でしたッ!!」

私の視界に入る人達にそう告げ、私は急いで外に出た。
疑いながらも、そうであるよう祈りながら…。
扉を勢いよく開け、外を見ると、私の疑いは晴れた。

「侑士!?あんたなんで居るの!!」

「言うたやろ?デートしよって」

笑顔でそう言う侑士の鼻が微かに赤くなっていた。
バイトが終わるのを待っててくれたと言うのが解った。
確かに誘われた。けど、どうして私なのかが解らない。
侑士が誘えば、デートしてくれる女なんて幾らでもいるのに…。
そう思ったが、私は敢えて口にはしなかった。
侑士と過ごせるんだから、それだけでよしとしよう。最高の、クリスマスかも知れない。
そう思ったから。

「言われたけど…」

「バイト終わってからやったら平気やろ?」

「ん…まぁ…」

「ほならデートしようや。折角のクリスマスやしな」

「えっ…ちょっ…」

強引に私の腕を引っ張り出す侑士に逆らい切れずに、私はなすがままに歩き始めた。
街はクリスマス一色。
サンタの恰好をした人や、サンタの赤い衣装を来た女性達が店を客引きをしている。
街にでたら侑士の強引さなんて忘れ、いつの間にか私ははしゃいでいた。
可愛い飾りを見つけては駆け寄って、眺めてみたりを繰り返し。そんな落ち着きのない私を黙って見ててくれる侑士。
傍から見たら私達は恋人同士だろう。そう思われていると思うと嬉しくて、自然と気持ちが浮いてしまう。
綺麗に飾られたイルミネーションが凄く綺麗で、目移りしてしまう程。光の街と化したそこは、まばゆい光りを放ち、幻想的にさえ見える。
四方八方から見える黄色い光の中に、所々見える赤や青、緑の明かりが凄く映えている。
隣に居る侑士も一緒になってイルミネーションを眺める。そんな些細な事嬉しくて、私は思わず笑みを零す。しかし、一緒にイルミネーションを見ていると言う不思議な気持ちもあった。
侑士が私を誘ってくれて、今一緒に居る。


あれ…?


なんで私なんだろう…?


「ねぇ侑士…」

「桜子どないしたん?」

「なんで私なんか誘ったの?侑士モテるし、一緒に過ごすあい…」

「桜子やないと嫌なんよ」

「へ?」
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