企画集(てにす)
□LOVE season-願-
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「俺と付き合って!!」
照れた様子もなく、ジロちゃんは私にストレートに告げた。
巨大なツリーの下で、私は予め用意されていた答えを、ジロちゃんに告げた。
去年のクリスマス。
私は大好きだったジロちゃんと、恋人としてのスタートを切った。
LOVE season-願-
「ジロちゃん早く!早く!」
「そんなに急がなくてもツリーは逃げないよぉ」
「だって早く間近で見たいんだもん」
後から着いてくるジロちゃんに勢いよく振り返り、私は手招きをしてジロちゃんに早くと促す。
苦笑いを浮かべるも、ジロちゃんは足早に私の傍に来てくれる。
先にツリーの下に着いた私は、瞳を輝かせながらツリーを見上げた。
大きな大きなツリーに視線奪われ、クリスマスなんだ…と改めて感じる。
呼吸をする度に白い息が、私の前に広がる。そんな寒さも気にする事なく、私はジロちゃんが隣に着いてからもツリーを見上げ続けた。
絡まっているライトが七色に光っている。まるで、ツリー自体が光りを放っているように…。
他の小さなツリーは水色の輝きを放っていて、暗い夜空に溶け込んでいる。
「綺麗だね」
「うん、すっごい綺麗…」
「これで二回目だね。桜子とクリスマス過ごすの」
「うん!!」
今までツリーに向けていた視線をジロちゃんに移すと、飛び込んで来たのはジロちゃんの笑顔。
無邪気な笑顔はまるで子供みたい。
そんな笑顔に嬉しくなったのか安心したのか、私も自然と笑顔になった。
このツリーは見守ってくれていた。
私達の何もかもを…。
このツリーの下で、私とジロちゃんは結ばれた。
ツリーを眺めていると思い出す。
私達のスタート…。
「去年なんだね…」
「俺が桜子に告白したの…ちょうど一年前だね」
「驚いちゃったよ。ジロちゃんにいきなり…でもないか…告られて」
「早く伝えたかったし、桜子とクリスマス過ごしたかったから」
「私もだよ。ジロちゃんとクリスマス過ごしたかった」
ずっと好きだった。
入学して、たまたま見たテニス部で、はしゃぎながらテニスをしているジローちゃんに出会った…。
一目惚れだった…。
凄い楽しそうにラケットを振っているジローちゃんが、凄い格好よく見えた。
私はその場で恋に落ちた。
そして、よくテニス部に出入りするようになって、少しづつジローちゃんと話せるようになった。
ジローちゃんの事を少しでも知りたかったし、親しくなりたかった。
「かっわEーッ!!名前なんて言うの?」
「えっ……な、桜子です…」
「桜子かぁー。名前までかわEーね。俺芥川慈朗。よろしくぅー」
私達の初めての会話。
話し掛けてくれたのはジローちゃんだった。
信じられなくて驚きながら、何とか言葉を発せた。
二年になって同じクラスになって、今まで以上に話せる関係になった。
今まで以上に親しくなった。休み時間は耐えず笑いながら話をしてた。部活にだって応援に行ったりした。
そうする度に、ジローちゃんへの気持ちは大きくなっていった。
私に振り向いてほしい。
そう思う願いが強くなっていった。
友達じゃなくて、彼女になりたい。
そう願う日々が毎日だった。
だけど、告白してフラれて、今の関係崩れるのも恐かった。
フラれて…口聞いてもらえなくなったら…。
今までみたいに楽しく過ごせない。
そう考えたら恐くて言えなかった。
だけど…
ジローちゃんがきっかけを与えてくれた。
「ねぇ桜子」
「なぁに?」
「クリスマス…一緒に過ごさない…?」
「えっ…?」
驚いた…。
ジローちゃんからクリスマス過ごしたいなんて…。
夢にも思ってなかった。
だから、驚きのあまり、私は聞き返してしまった。
ジローちゃんの不安そうな表情。それがなんだか心に引っ掛かった。
それでも、私が首を横に振る事は有り得ない。
「奈緒と過ごしたいなぁー…って…思って…」
自信のなさそうなジローちゃんを見たのは、出会ってから初めてだった。
ジローちゃんが不安になることなんか無い。
私がジローちゃんの誘いを断るなんて有り得ないから…。
「うん。いいよ」
私は驚きが嬉しさに代わり、満面の笑みを浮かべながら返事をした。
好きな人と過ごすクリスマスがどれほど暖かく、幸せなものか…。
きっと、私の想像以上。
ジローちゃんと過ごせる。
この想いだけが、私の支配した。