企画集(てにす)
□LOVE season-鎖-
1ページ/2ページ
イルミネーションが街を飾る季節は、心が躍る。
普段何でもない街が、華やかな街並みへと姿を変える。
幻想的な色とりどりのライト。可憐な笑顔。
幸せの色に染まる景色は、綺麗としか言いようが無い。
そんな幸福な雰囲気に包まれた中、鞄の中で鳴り響く携帯を取り出し、ディスプレイを確認してから、私は電話に出た。
LOVE Season-鎖-
「はぁー…一人になっちゃったぁー…」
携帯が着信を知らせ、出たら約束していた友人からだった。
突然、友人が来れなくなったとの事。
私はがっかりと肩を落としながら、待ち合わせだったはずの巨大クリスマスツリーの下に腰を降ろした。
折角楽しみにしていたのに…。何だか裏切られた気分だ。すっきりしない。仕方ないとは思ってみるも、やっぱり悔しい。
今日の為に服だって新しく買った。身嗜みだっていつもより念入りにした。
友達と過ごすって言う点で言うと、何だか物悲しい気もしなくはないが…。でも今日が楽しみだった私にしてみれば同じ事。友人だろうが恋人だろうが、ドタキャンされると悔しい気持ちは変わらないだろう。
私はツリーの下で、もう一度、深い溜息をついた。
「はぁー…淋しいクリスマスになっちゃったなぁー…」
世の女性達は、恋人と腕を組みながら幸せな一時に浸かるんだろうなぁー…。
その証拠に、辺りに視線を巡らせると、カップルしか写らない。まぁたまにおかしな組み合わせのカップルがいるが、敢えて見て見ぬフリをしてみる。
幸せ一色に彩られた街で、私は孤独に襲われた。
「何やってんだろ…私…」
急に、私の心に脱力感が被さった。いや…脱力感と言うより、淋しくて切ない気持ちに近い。
辺りを照らすイルミネーションは、私に見ろとでも言わんばかりに明るく光っている。
(でも折角来たんだし、イルミネーション見てから帰ろうかな…)
一人じゃ淋しい事は解っている。
だけどライトアップされている街が神秘的な輝きを放っていた為、私はイルミネーションを少し眺めてから帰るのも悪くないな…と思いながら、立ち上がった。
凄く綺麗なイルミネーションに心奪われる。
私が座っている場所から見上げると、巨大クリスマスツリーが眺める。そのクリスマスツリーにも様々な仕掛けがしてある。
私がクリスマスツリーを見上げ、視線を下げようとした視界に、見知った顔が飛び込んで来た。私のよく知っている人。
「あれ…?景吾だ…」
視界をよーく凝らして見ても、景吾に間違いない。
一瞬信じられなかったが、私の目に間違いは無い。
私は声を掛けようか迷った。
もしデート中だったら…。そう考えたら気が引けた。
しかし数分見ていて彼女がいないとわかると、私は声を掛けようと決心した。
「景吾!!」
「あぁ?」
私の呼び声に、景吾は顔を上げてくれた。
まさか会うとは思っていなかったから、私は嬉しくて、景吾に駆け寄った。
「こんな所で一人で何やってんの?」
「お前こそ何やってんだよ」
「あぁー…友達にドタキャンされちゃって…。景吾も?」
「ドタキャンされるような相手いねぇーよ」
「えぇー…景吾モテるんだから一人や二人居てもおかしくないじゃん」
嘘ばっかり…。
クリスマス過ごす相手なんて腐る程いるくせに…。
一人や二人居たって、景吾なら絶対おかしくない。
いない方がおかしい位。
「バーカ。どうでもいい女と過ごしてどぉすんだよ」
「まぁ…それもそうだけど…。じゃぁなんで此処にいるの?」
「別に…何となく外に出たかっただけだ」
「ふぅーん…」
クリスマスは好きな人と過ごすものだし、景吾が女からの誘い断るなんていつもの事だし…。私はあまり気にしない事にした。
理由はどうあれ、景吾と会えたんだからまぁいいか。
そう思うことにした。
ドタキャンされてよかった。今ならそう思える。
「ねぇ景吾、折角来たんだし、一緒にイルミネーション見ようよ」
「あぁ」
夜だと言うのに、それをものともしない程明るい街。
大きなクリスマスツリーを筆頭に、沢山の小さいツリーに明かりが灯っている。
黄色・赤・青・緑のランプが光り、ツリーを引き立てている。
周りは恋人同士ばかり。
だから、私達もそう見えたりするのかな…と微かな期待を抱いた。
けど、景吾にはそんな気全くないだろうなぁー…。
昔から一緒にいるけど、全く変わらないし…。
変わった事は、最近話してくれなくなった事位。
同じクラスで幼馴染みなんて、繋ぎ止めておく鎖になんかならないんだ…。
そう、繋ぎ止めておくには弱くて脆い…。