企画集(てにす)

□バレンタインSS-参-
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for S.ryo-


愛を贈るから…


大切にしてよね?


Happy valentine.



ずっと好きだったけど、喧嘩友達みたいなものだから、そんなこと言えるわけもなくて、今でも友達のまま。
けれど、今日はバレンタインデー。


少しだけ…


勇気出してみようかな…。


「亮」

「あ?なんだ桜子か」

「私で悪かったわね」

素っ気ない亮の態度に、カチンときながらもなんとか抑えた。
今日は、喧嘩をしにきたわけではない。
大切なことを伝えたくて来たんだ。

「別に…んで?どうかしたのか?」

「数学の先生が探してたよ。プリント出してないのお前だけだから早く出せぇーって」

「あぁ…」

素っ気ない亮の返事に、私は呆れながらため息をついた。
やる気がないのかなんなのか…。
なんでこんな奴好きになったんだろうって、時々不思議に思うことがある。
普段、よく喧嘩しているから、他の話なんてあまり思い付かない。
亮の隣に移動して、一緒に空を見上げた。
すると、亮は背伸びをしながら口を開いた。

「あーあっ!今日バレンタインなのになぁ…」

「どーせいっぱい貰ってんでしょ」

つい、何時もの嫌みが出てしまった。
けど、今日の亮は言い返してこない。それどころか、手摺に寄りかかり、その場に座り込んでしまった。

「貰ってねぇよ。ったく…跡部や忍足は腐る程貰ってるっつーのにな」

「バカはモテないからねぇ」

拗ねている亮が何だか可愛く見えてきて、思わず笑みをこぼしてしまった。
男子テニス部は、すごくモテるっていう印象があるけど、亮はそうでもないんだ…。
なんかちょっと意外だけど、なんかすごく安心した。

「うるせぇよ」

「人がせっかく心配してんのにぃー」

「お前に心配されるなんてな」

苦笑いをしながらそういう亮に、何だか無性に好きだと言いたくなってきた。
だけど、素直に好きなんて言う勇気なんてなくて、けど、いつもどうやって接していたのかさえ思い出せなくて、遠回しに言うしかない。

「じゃ、モテない亮にこれあげよう」

「えっ…」

そう言って、私は亮の目の前にチョコの入った包みを落とした。
告白しちゃえば、こっちのもんだ。

「言っとくけど、義理じゃないからね」

「おわっ!?」

盛大に驚いた亮は、顔を真っ赤にしていた。
喧嘩した時の亮しか知らなかったから、こんな亮初めて見た。
喧嘩友達だったら、きっと損してたね。
顔を真っ赤にして俯いている亮に、私は笑顔を向けた。

「私の気持ちだよ」

「あ、ありがとな…」

「いいえ」

顔を真っ赤にしている亮を見れば、気持ちなんてすぐに解る。
チョコを持って戸惑っている亮。そんな亮も可愛くて、笑顔が止まらない。

『催促したなんて言えねぇーじゃん…』

そんなことなんて知らずに、やっと絞り出した勇気で、今は私は、亮の一番近い場所にいる。
バレンタインがあって、本当に良かったと思えるよ─…


2008/02/14
Happy valentine!


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