金銀花
□恋人来たりて、愛囁く
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早く…
早く…
君をこの手に抱きたくて。
恋人来たりて、愛を囁く
忙しなく行き交う人々。
時計を気にしている人。携帯を気にしている人。自分を気にして鏡を見ながら歩いている人々。それぞれで、見ていて飽きない。
喧騒に紛れた街。
雑踏に賑わう街。
万事屋から見下ろす。
まるで、自分が行き交う人々を操っている様な、不思議な感覚に陥る。
この街は、酸いも甘いも知っている、キャホーな奴等ばかり。
男に現を抜かす女。
女に現を抜かす男。
男に現を抜かす男。あ、それは一部だけだ。
他にも、色々な男女がいる。
沢山の男女の中で、出会えたキセキ。…なんて言ったら大袈裟だろうか。
…いや、その通りなんだ。
どんな喧騒でも。
どんな雑踏でも。
君の姿ならすぐ見付けだせる。
君と出会えた街。
君と結ばれた万事屋。
この街は綺麗で、華やかだ。
見下ろしていた銀時は、嬉しさのあまり不意に微笑む。そして、優しく呼び掛ける。
「桜子」
呼ばれて、桜子は顔を上げる。
万事屋の二階には、自分に手を振り微笑んでいる愛しい人。嬉しくなり、自分も笑顔で答える。
「銀ちゃん!」
足が、勝手に走り出す。
逸る鼓動を抑えながら、あの人の元へ。一分一秒でも早く辿り着きたくて。
早く、早く。
息を切らして、階段を駆け上がり、両手を広げて待つ銀時へと。
「桜子、来い」
飛び付く。
思い切り胸へと飛び込み抱き付く。銀時も、桜子をぐっと強く抱き締める。
「銀ちゃん!」
幸せな笑顔。
幸せなオーラ。
「早く会いたかった」
「俺も」
二人の間に、入れる隙間なんて一ミリも無い。二人だけの世界。
この世界は、銀時が中心。
この世界は、桜子が中心。
他人の声なんて、聞こえない。
二人だけの世界に浸り、幸せを噛み締めていく。
恥ずかしくなんてない。
だって此処は、二人だけの世界なんだから…。
終
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