金銀花

□欲望のままに独り占め
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ヤバイ…



ムラムラします!





欲望のままに独り占め





先程迄、夏休みの子供達で溢れ返っていた市民プール。今は、馬鹿しかいない。いや、ただの馬鹿じゃない。歌舞伎町中の馬鹿が集まった、最も危険なプールへと化しているのだ。

「デジャブゥゥゥゥ!!!!!」

「デジャブじゃねぇ。将軍がいねぇからな」

「いやほぼデジャブだろーが!!去年もこうなったよなぁ!!馬鹿しかいない市民プールになったよなぁ!!」

「いや、将軍がいねぇ」

プールサイドで仁王立ちになり、馬鹿しかいないプールを眺める。
一緒に遊ぶ気になんて、到底なれない。プールに来たのだって、神楽が駄々を捏ねたから。好きで来た訳じゃない。
隣で喚き散らす長谷川を無視して、此処に将軍がいない事に安堵した。もう、将軍様の気紛れに付き合うのは懲り懲りだ。いい事なんて一つもない。

去年の二の舞になり、長谷川はすっかり意気消沈。監視員のバイトを放り投げて、逃げる覚悟を決める。見付からない内に、プールを満喫してやろうと、開き直りつつある。

「もうどうにでもなれぇー!!夏休み満喫してやるー!!」

「あれ?デジャブ?」

「俺は知らねぇー!!」

そう言いながら、馬鹿のいるプールへと飛び込んだ。
半ば壊れ掛けたマダオ。子供達と一緒に、ビーチバレーを始める。
その光景を見て、呆れる銀時。また将軍が来るのではないかと気にしていたが、その心配はないようだ。誰も来る気配はない。

(誰も来ねぇーか…)

誰も来ない。それは淋しくて、意気消沈したくなる。
がっくりと肩を落とし、椅子に座りうなだれる。

「来るな」と言ったのは自分。
しかし、期待したのも自分。
でも、長谷川や桂達に見られたくない。見せたくない。

けどそれでも、彼女は「行く」と言った。「待ってて」と神楽の頭を撫でた。
だから、「解った」と妥協して、待つ事にした。彼女が来るのを、椅子に座り待つ。
時折チラリと入り口を一瞥するが、彼女が来る気配はない。

早く見たい。
だけど、誰にも見せたくない。

見たいけど、他の奴らには見せたくない。一度は「来るな」と言った事を後悔した。だけど、やはり本音は来て欲しくない。

水着姿は是非見たい。
我慢出来るかは別として、やはり男だ。好きな女の水着姿は、一度は見たいもの。

出来たら、布の面積が少ない方がいい。あのスタイルを如実に表せる水着なんて最高だ。

(我慢出来なかったら、そん時はそん時だ)

絶対に我慢出来ないと思う。
何せ銀時は変態。自分の彼女なら盛り放題だし、組み敷くのは大好きだから。

(ビキニなんて、襲って下さいと言ってる様なもんじゃねぇーか。まぁ、スクール水着なんて、有り得ねぇけど、それはそれで燃えるか…)

一人くだらない事を考える銀時。遊びに加わらないで、ベンチに座っている銀時に向かって、何となくイラついた神楽は、殺人的速さでボールを投げ付ける。

「ぶべっ!!っつー…てっめぇー…何しやがる!!」

避けるに避けられない。不意に飛んできたボールを、もろに顔面に食った。
怒りに任せて立ち上がり鼻血を出しながら、投げたであろう神楽を睨み付ける。
鼻を押さえ、折れていない事を確認。神楽の投げたボール。幾らビーチボールとは言え、威力は半端じゃない。

「何黄昏てるアル。どうせ、桜子の厭らしい姿でも想像してたんだろ」

「なっ!ち、ちげぇーよ!!まだ来ねぇーかなぁーって考えてただけだしぃー!!」

図星を突かれ、思わず吃る。だけど、こいつらには悟られたくない。しかし、明らかに動揺している。目が泳いでるし。
二人の会話に反応したのは、マダオ。嬉しそうに笑っている。

「何々?桜子ちゃん来るのかよ。早く言えよ銀さん」

「誰が言うか!いいか長谷川さん!!桜子が来ても絶対に見るなよ!!視界の端にも入れんじゃねぇーぞ!!」

独占欲丸出し。
そりゃそうだ。プールなんて、下着も同然の姿を、他の男に見られるだけの場所。そんな所に、自分の可愛い桜子を自ら連れてくる訳が無い。
長谷川にだって、言う訳が無い。桜子の水着姿を楽しみに待つ姿なんて、想像しただけでも腹が立つ。目ん玉穿りたくなってくる。


だから、桜子には来て欲しくなかったんだ。他の男の目になんて、曝したくはない。
だけど、「行く」と言って聞かなかった。だから、仕方なく諦めたのだ。


こうなったら、長谷川を気絶させるか?


いいや。それは却下だ
心の狭い男だとは思われたくない。それに、そんな事したら、絶対に怒られる。

一度は「来るな」と言ったけれど、「仕方ねぇな」と言った手前、桜子の前じゃ心の広い彼氏を演じなくては…。
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