金銀花

□恋蜜
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もう…



君以外愛せない。



……多分…。





恋蜜





『桜子、買い物行きたいアル』

暇潰しに、ソファーで銀時から奪ったジャンプを読んでいたら、急に神楽から声を掛けられた。断る理由はない。暇だったから、逆にやる事を見付けて嬉しくなり、二つ返事で引き受けた。
桜子の隣でふて寝をしていた銀時も、何故か着いて来る事になり、桜子は勝手に銀時を荷物持ちに任命。っというか、強引に押し付けた。断る気力もなく…。

一通り買い物を終え、馴染みの甘味屋の前で一休み。
両手一杯の荷物に、銀時は息を荒げながら不満を口にする。

「ゼェ‥神楽の買い物に付き合ったのに…はぁ‥何で桜子の荷物の方が多いんだよ!!!」

買い物に誘ったのはいいが、神楽が買ったのは酢昆布のみ。後は全て桜子が買ったものばかり。
殆ど、桜子の買い物だ。明らかに、誘い誘われの立場が逆転している。誘ったのは神楽。でも、買い物に付き合っているのも神楽。
次から次へとお店に入り、必ず何かを買って出て来る。神楽は、その後を着いて行き、時々何かを買ってもらうだけ。

腕の筋肉が、もう限界を迎えている。荷物を置き、重荷から解放された腕は若干痺れている。

まぁ、銀時は自らの意志で買い物に着いて来ただけ。
文句を言われ、イラッと来た桜子は、じっと銀時を睨み付けた。

「勝手に着いて来て、何文句言ってんのよ。荷物持って、帰ればいいじゃない」

「一緒に居たかったんだから仕方ねぇーだろ!!んでそんなにつめてぇーんだよ…」

「素なんだから仕方ないでしょ」

家に一人でいても詰まんない。桜子が買い物へ行ってしまうなら、一緒に行った方が退屈はしない。淋しくもないし、桜子と一緒にいられる。

冷たいけど。
下僕としか思ってないけど。

それでも、桜子が好き。
好きだから、こう見えても付き合っているんだ。


恋人には到底見えないけどね。


「けど、もう少し…」

「煩い」

思い切り睨まれ、銀時は命の危険を感じて言葉をつぐんだ。
何を言っても無駄。この迫力と恐怖に、押し負かされるのがオチ。無駄な足掻きはもうしない。

(何でこんなに冷たいんだよ…)

いつもの事。もう慣れてしまったが、やっぱり、もう少し優しくされたい。
桜子には逆らえないし、ちゃんと言う事は従順に聞いているのだから、もっと素直になってくれてもいいのに…。

重さで固まってしまった肩を揉みながら、甘味屋の前に腰を下ろした。そんな銀時を隣で見ていた桜子も、その横に腰を落とす。

口では何とでも言える。
だけど、冷たくて自分に素直な桜子だからこそ、一緒に居て、本当の事しか行動に示さない。

こうして、何だかんだ言いつつも、桜子は隣にいてくれる。傍にいてくれる。

嫌いだったら傍になんて近寄らないし、こうして隣に座る事も許してくれない。

(冷たいけど、何だかんだ言ったって俺の事好きなんだよなぁ)

こうして、何も言わずに隣に座ってくれる。これが、もう桜子からしたら愛情表現。
想われている。その気持ちが嬉しくて、銀時はつい口角を上げた。そんな銀時に気付いて、桜子は睨む様な視線を向けながら口を開く。

「な、何?気持ち悪いわね…」

「気持ち悪いって…彼氏に言う言葉ぁぁ!!??」

「いくら彼氏でも、にやにやしてたら気持ち悪いでしょ…」

「やっぱつめてぇーなぁ…」

桜子が可愛くて、思わず口元が緩んだだけ。それなのにこの言われ様は何だろうか…。

冷たいけど好き。いや、冷たいから好きになったのかも知れない。
普段ツンツンしている子が、たまにデレたりすると、堪らなく可愛くて抱き締めたくなる。正に、それをやられて銀時はまんまと桜子に落ちたのだ。

「その冷たい私に惚れたのは誰よ。全く…さっきっから煩いわね」

「俺だけどよぉ…もうちょっとデレてもいいんじゃねぇーの?」

「そう言われても…性格なんだから仕方ないでしょう…」

銀時の言葉に、桜子は軽くため息を吐く。そんなに優しくされたいのだろうか…?

気が強いのは昔から。
小さい頃から、言いたい事はちゃんと言うし、やりたい事は即座に行動へと移していた。
可愛く振る舞うなんて、してこなかったから、やり方なんて解らないし。何が良いのかも解らない。
自分に素直に生きてきた。だから、デレたかったらデレる。でも、今はデレてる場面じゃない。

「もう少し、彼氏に優しくてもいいんじゃねぇーのぉ?」
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