金銀花

□Beautiful days.
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麗らかな空。



賑やかな教室。



響き渡る怒号。



今日も、素晴らしい一日です!





Beautiful days.





フザケた教師。
真面目に強弁を取らず、ジャンプばかり読んでいる教師達。
生徒のボケにボケを被せて、ひたすらボケ続ける教師陣。

ふざけた生徒。
授業にならないと嘆くも、そこを敢えてボケで返す生徒達。
真面目に授業を受ける気がなく、毎日エキサイトしている生徒陣。

ふざけた奴しかいない学園。
そして、年々入学志願者が減ってきている学園。
けれど、そんな学校にも一応生徒会長というものがいる訳で。実質、会長が忙しくて副会長がその任務を担ってはいるが、一応生徒会長と呼ばれる生徒はいる。

ふざけた学園が大好きで、賑やかな生徒が大好きで、何より、ジャンプを読んでいるやる気のない教師が大好きな、銀魂高校の生徒会長が…。

「最近見ないねぇー…」

職員室で堂々と煙管を銜えながら、独り言のように理事長のお登勢が呟いた。
その独り言を、たまたま近くにいた服部、銀八、月詠が聞いていた。気を利かせて、服部と月詠が言葉を返す。銀八は我関せずとジャンプを読んでいる。

「そういやぁ見ないですなぁ…。仕事が忙しいんじゃねぇーの?」

「仕事?誰の事じゃ?」

全く解らない月詠。
無理もない。今年入ったばかりの新任教師。今年になって、まだ一度も学校へは姿を見せていないから、解るはずもない。
服部に聞き返すと、口元だけの笑みを浮かべる。っていうか、前髪うざいから切った方がいいと思う。それを毎回月詠は思うけれど言わない。本人、気に入っていて格好いいと思っているから。

「月詠先生は知らねぇーんだな。銀魂高校(うち)の生徒会長を」

「生徒会長?っというか、この学校に生徒会長なんて居たのか?」

こんなふざけた学園に?
こんなふざけた教師が信頼を置く生徒会長が?

挨拶まわりで、生徒会長になど回ってはいない。いや、副会長には回ったかな?いいや、回っていないような回ったような…。
転勤する前の日、かつての仲間と飲み明かしてしまい、かつてない程の二日酔いに襲われながら出勤したから、あまりというか全然記憶にないのだ。

もう、酒は飲まないと決めたのに、新任歓迎会でまた飲み明かしてしまった事は言うまでもない。

「一応高校だしね。委員会や部活があるんだから、生徒会もって作ったんだよ」

「けんど、わっちは一度も見た事がありんせん」

「仕事だからって言っただろう。あいつは滅多に学校来ねぇーんだよ。まぁ、それが許されてんだけどな」

「へぇー…」

生徒会長の話題で盛り上がる三人。その横で、ジャンプから視線を剥がす事無く冷静に話だけを聞いている銀八。
ここ最近、全く会っていない。仕事が忙しいのは仕方ないから、特に何をする訳でもないが、あいつがいないのは淋しい。でもそれは、銀八だけが思っている事じゃない。他の教師や、生徒だって思っている。特に三zは生徒会長と意外に仲が良いから、ついこの間も淋しがっていたなぁ…と思い出した。
感慨に耽っていたら、いきなりお登勢に頭を殴られた。

「い!!っつー…っ!何しやがるクソババァ!!」

ジャンプからやっと目を離し、怒りの声を上げながら立ち上がりお登勢に噛み付く。

「あんた、いつまでスルーしてる気だい」

「何がだよ」

「連絡取り合ってんじゃないのかい?今度いつ来るかーとか、何も聞いてないのかい?」

「聞いてねぇーよ。忙しいから、俺なんかに連絡する暇もねぇーだろうよ」

落ち着き払った態度で椅子に座り、机に向き直る。しかし、美味い具合に足が入らない。

(ん?)

おかしいな…と椅子を一度引くと、すぐにその原因と遭遇。
鼻息が荒い女子がいるおぞましい光景。しかし、もう見慣れた光景。驚きはしない。
銀八は無言で立ち上がり、椅子を思い切り机めがけて押し入れる。

「ぎゃん!!」

机の下に潜んでいたさっちゃんに当たり、職員室に悲鳴が響き渡る。そんな事お構いなしで、銀八はうっすらと血管を浮き出しながら出席簿片手に歩き始める。

「猿飛ご臨終…と。俺は授業に行って来ますわぁ」

出席簿をひらひらさせて、銀八は職員室を後にした。
机の下では、痛みに耐えながらさっちゃんは欲望にも耐えている。

「素敵だわ!銀さん!!あんな攻撃しかけて来るなんてぇぇ!!」

「いや…俺でも同じ事するぞ」

「あなたに興味は全くないから安心して。私が好きなのは銀八先生だけだから」

机の下から抜け出し、さっちゃんは髪を掻き上げながら言った。服部には微塵も興味はない。しかし、銀八もさっちゃんに微塵も興味はない。
さっちゃんに呆れて、三人は溜息をついた。すでにさっちゃんは銀八を追い掛けて行き職員室からは姿を消している。銀八のあの態度にも呆れている。
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