金銀花

□サボり魔の時間有効活用法
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「あぁー…だりぃ…」

市中見回り中、仕事に飽きて橋の上でサボりながら、空を仰ぐ。


ヤバい…。
完全にやる気が出ない。





サボり魔の時間有効活用





「ホント…やる気出ないわぁー」

橋に寄り掛かり、仕事をしてるのが馬鹿らしくなる程、青々と晴れた空を仰ぎ、再び呟いた。

なぁーんでこんなに、天気がいいのに、仕事なんてしてんだろう。
屯所にいると、土方が煩い。二言目には「仕事しろ」しか言わない、あのニコチン野郎の顔が見たくなくて、市中見回りに逃げてきた。ザキがこの時間の担当だったけど、無理矢理奪った。

今頃、ミントンして怒られている頃だろう。

「にしても…暇だ…」

ろくに市中なんて見回ってないけど、騒ぎが起きてる形跡も、ストーカーがスタンバってる様子も見られないから、取り敢えず、暇を弄ぶ。

土方がいなければサボり放題。それに、あそこは息が詰まる。


煙草の臭いで。


結局禁煙続かねぇーし。辞めるつもりもないみたいだし。あんのニコチン野郎…。

日頃怒られてしかいないから、不満は溜まる一方。まぁ、ほぼ自分が悪いんだけどね。サボりまくってるし。雑務しないし。屯所からよく逃げ出すし。


まぁ、基本あれだよね。仕事したら死んじゃう的なあれだよね。ってか仕事したくない。
攘夷志士斬るのならいいけど。それ以外の仕事は、基本ノーサンキュー。これ基本中の基本。


空から視線を剥がし、平和な町並みを見渡す。すると、こちらに向かって歩いてくる見知った顔を見付けた。

こっちは仕事があるけど絶賛サボり中。向こうは、どうせ仕事がなくて暇しているのだから、構ってもらおうじゃないか。
町中なんて気にしない。叫びながら、走り寄る。

「銀さぁぁん!!」

「あぁ?っどわ!!」

顔をあげた銀髪に、勢いよく飛び付いた。胸の中に飛び込むと、意外と厚い胸板と逞しい腕で、何の躊躇いもなく受け止めてくれる。
さすがにいきなり抱き着かれたから、多少は驚いたみたいだったけど、いつもの事だからと、呆れながら溜め息を溢す。

「暇でしょ!?」

顔をあげて、キラキラした目で銀さんを見上げる。基本、この人は暇だ。んな事解ってる。

「桜子ちゃん…またサボってんの?っつーか、毎回その聞き方どうにかしろよ。銀さんだって忙しい時くらい…」

「えっ…忙しいの…?」

わざと悲しげな表情を浮かべる。そうすると銀さんは、自分が暇な事を認めてくれる。毎日暇って言うのも、銀さん的には気が引けるらしい。

「あぁーっ!暇だよ!ついでに言うと、さっき玉打ちに行ったら、全部飲み込まれて金もねぇーよ」

「んなの知らねぇーし」

「うわっ…一気に冷静になんの止めてくんない?」

銀さんがお金ないのはいつもの事だし。私には関係ないし。

パチンコに負けて、かなりげんなりしている様子。私を抱き止めたまま、深い溜め息を吐いた。

勝つ事なんて滅多にないんだから、行かなきゃいいのに…。

この後、折角貰った報酬を使われた事に激怒した、新八君と神楽ちゃんに、ボコボコにされる展開なんて、安易に予想が付く。
ボコボコにされる銀さんを見て、隣でゲラゲラ笑いながら、「自業自得だよ」と言い放つ自分の姿がある事も解る。

市中見回りの時、決まって私は銀さんと一緒にいる。暇で構ってくれる人なんて、銀さんくらいなもんだから。こうして、お互い何も言わなくても、来てくれる辺りが、かなり嬉しい。

「お金ないのはホントにどうでもいいから、デートしよっ!」

銀さんの腕に、自分の両腕を絡ませて、嬉々としながら告げた。
仕事中だけど、そんなの関係ない。私は今、銀さんとデートがしたいんだから。

「別にいいけどよ…。いつもいつも…。仕事、ホントにいいのか?また大串君にどやされんぞ」

「私今日非番だもん」

「そんな格好して、んな事言われても、説得力ゼロだけどな」

明らかに服装は仕事中。腰には刀あるし。でも、あんなかたっくるしい服装じゃなくて、ワイシャツに黒いスカート。女子用の制服。っていうか、暑いから上着とベスト着てないだけ。まぁ、これならギリギリ、私服に見える。


刀さえ持ってなければね。


ほぼ毎日見ている銀さんには、見破られてるけどね。けど、それが何だか嬉しかったりする。

「仕事なんていいの!私は今、銀さんとデートがしたい。だから、仕事は銀の次ー」

二の次を捩った私に、銀さんは半ば呆れながら口角を上げて、「仕方ねぇな…」と、笑ってくれた。
そんな銀さんの笑顔にドキッとしながら、取り敢えず、完全なサボりを決め込む。
この出会いは、偶然でもなければ奇遇でもない。ちゃんとした必然なんだから。

「早く行こう!」

「わぁーったから!そんなに引っ張んなって…」
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