金銀花
□サディスティックヒロイン
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強いけど…
可愛い彼女?
サディスティックヒロイン
「何で疑問系なのよ」
「俺に言われても…」
「サドでも、可愛ければいいじゃない」
長椅子に座りながら、若干怯えている銀時を睨み付ける。
小さい声で呟いた彼女の言葉に、「まぁ…確かに…」と銀時も呟く。怖くて、言い返せないだけのヘタレ。そんなの解っているから、彼女の桜子は、浅い溜息を零す。
横暴で狂暴。我儘で自己中。銀時の物は桜子の物。桜子の物は桜子の物。そんな、ジャ○アン的な精神の持ち主。けど、見栄えは飛びっきりの美人。そんな容姿に、胸を射抜かれた。そしてこの有様。
「詐欺だよな…」と呟いたら、全裸で外に放り出されそうになった事もあった。それ以来口にしていないが、内心毎日思っている。
騙されてもいいけど。寧ろ、騙されて逆に得する詐欺。だけど、怖いもんは怖い。
長椅子に座っている桜子をじっと見つめる。口を開かなければ、超絶可愛い。長い睫毛に、自己主張宜しい大きな瞳。細過ぎず太過ぎない腕と肢体。欲望を掻き立てられる白い肌に、ぐっと堪える。
サディスティック具合は、真選組の沖田とそう大差ない。
けれど、どうしても嫌いになれない。桜子のサディスティックな部分が、嫌いになる要素にはならない。
好きなものは好き。冷酷無比な彼女でも、好きなんだから仕方ない。嫌いになんて、絶対になれない。そんな要素、欠片も見付からない。
「何?どうしたの?」
「いや…」
気付かない内ににやけていたのか、桜子に軽く睨まれた。
怖いと思うも、桜子が可愛い事に変わりはない。にやけていた口元に力を入れるが、桜子を見ていると次第に力が抜けてしまう。
どうしてこんなに可愛いんだろうか…。
天使の様な外見に、悪魔の様な中身。全くの真逆な種族が、こうも上手い具合に同棲できるなんて…。ある意味凄いな…と、感動すら覚える。
しかし、桜子を見ていて解った事がある。
桜子は可愛い。今までであった女の子の中で、一番可愛い。
そして、そんな可愛い子の欠点だからこそ、その欠点すらも可愛く見える事に気が付いた。
可愛い子に隙が出来ると、それすらも愛おしくて、益々深みに填まっていく。
「なぁ桜子」
「何?」
腕を組んでいて、かなりでかい態度何だけど、小さく首を傾げながら視線を合わせる。
そんな仕草に弱い事を知っていて、わざとしているのだろうか…。
いや、わざとじゃない。
計算して動く程、桜子は器用じゃないから。
「やっ…あのさぁ…桜子って、俺の何処を好きになった訳?」
「えっ?…何処って…」
「桜子からしたら、俺なんてただのおっさんに片足突っ込んだ、万年金金欠なマダオじゃん?あ、なんか自分で言ってて悲しくなってきた…」
自分の言葉で勝手に傷ついている銀時。そんな彼氏を、「馬鹿だなぁ」と思うも、そんな馬鹿な彼氏が愛おしくて仕方ない。
おっさんに片足突っ込んでいようが。
万年金欠で、ぐうたらに生きていても。
どうしようもないマダオでも。
そんなの、桜子からしたら関係ない。そんな小さい事を気にする程、心は狭くない。寧ろ、そんな銀時を受け入れている桜子は、誰よりも心が広いのだろうな。
すぐにキレる桜子でも。絶対に、銀時との絆は切ったりはしない。
向かいのソファから立ち上がり、銀時の座るソファへと移動し、隣に座る。そして、一人悲しんでいる銀時に微笑みかけた。
「彼氏のくせに、そんな事も解らないの?馬鹿なの?死ぬの?変態なの?」
「えっ…死にはしないと思いますけれどぉー」
微笑みから一転。毒を吐き出した桜子に、自分の耳を疑った。
あんなに可愛い笑顔を浮かべていたのに…。開口したら、きっつい言葉しか聞こえなかった。
焦っている銀時に、桜子は笑顔で口を開く。
「好きな人程いじめたくなるっていうじゃない」
「小学生じゃねぇーんだから…。え?じゃぁ何?俺が恐怖を感じれば感じる程、桜子は俺が好きって事なの?」
「そういう事だね」
「いやいや待って!!なんかおかしくない!?俺、何処ぞのくのいちみたいにMじゃねぇーから!Sだから!っつーか恐怖感じれば感じる程ってどんな愛だよ!!」
「サディスティックな愛」
「そうだねそうでしたねぇー!」
一人で吠えている銀時。
Mじゃなくても、彼女がSなんだから仕方ない。彼女からの愛、しっかり受け止めなければ。